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「父娘の関係」を考える二冊
お正月なので長めに実家に帰省し、正直疲れた。
それぞれに生活基盤があり、若いころより譲れないものが多くなったと実感。
わがままとわがままがぶつかり合う。
昨今、話題になっているわかりえない「母娘の問題」に納得。
☆母と娘の関係
仲良し友達母娘から、母と娘のわかりあえなさ、こじらせ関係に悩む姿を描いている作品をよく目にする。
映画化もされた湊かなえ「母性」なんかもそうよね。
では、父と息子は?
☆父と息子の関係
母親を手に入れようと思いから父親に対して強い対抗心を抱く「エディプスコンプレックス」
自我の目覚めからなる父親殺し。
村上春樹が「海辺のカフカ」でがっつり描いている。
息子は父を乗り越えようとし父親を(精神的に)殺す。
「スターウォーズ」のルークとダースベイダーの関係もそうよね。
では、『父と娘』の関係はどうなんだろう?
ということで読んだ二冊。
ジェーン・スー「生きるとか死ぬとか父親とか」
🔖ドラマ化もされ母を二十年前に亡くしたジェーンさんと、若かりし日は、遊び好きで野心家で博徒タイプの父との関係を描いたエッセイ。
梯久美子「この父ありて 娘たちの歳月」
🔖渡辺和子、斎藤史、島尾ミホ、石垣りん、田辺聖子、辺見じゅん、萩原葉子、石牟礼道子。
不朽の名作を生んだ9人の女性作家たち。唯一無二の父娘(おやこ)関係が生んだ、彼女たちの強く、しなやかな生涯
☆父と娘の関係
「この父ありて」のあとがきを読みなるほどー。
・父に庇護される立場にあるとき、多くの女性には「こうあってほしい」という父の像がある。そうでない父に失望し、批判の目を持つようになるのである。だが、父を庇護者をして見るのをやめ、自分で築く人生を選んだとき、父との新たな関係が始まる。(あとがき本文より)
☆二冊を読んだ感想
ジェーンさんなんてまさに「この父ありて」のあとがきのそれ。
母が亡くなり緩衝材が無くなって、父との折り合いが悪化。
若し日に、こうあってほしい父親を務めてくれなかったことへの苛立ち。
でも、中年になり、友達のような、年の離れた兄弟のような疑似関係を築くことでなんとかやってこれたのは、生きていようが死んでいようが緩衝材になる母の存在。
わかるなぁー。
父と娘の関係も、母と娘の関係もわかる緩衝材。
緩衝材になるべく母親は殺せないもの。
だから母と娘はむずかしいんだと一人で納得。
そして、「この父ありて」で印象に残ったのは、
・石垣りんさんと父親との関係も複雑。
けっして父を務めようとせず男として三回結婚した父親を養い続けた石垣りん。
・戦後に、生きる気力を失った父にやさしい言葉の一つもかけることなく死なせてしまった田辺聖子の後悔。
この様子は、朝ドラ「芋たこなんきん」で描かれていた。
・角川書店創業者である父親に認め越えたくて作家になった辺見じゅん。
・マザコンでシスコンの萩原朔太郎を父に持ち、妻とのマンネリ化を脱するために陰で不倫へと誘導し結果離婚。
そのため母のことを憎む祖母からネグレクトされ続けた萩原葉子の姿が衝撃。
二冊に共通するのは、現在では「父親不在症候群」なる症状もあるぐらい父親不在が当たりで且つ問題でもあるが、父親の存在が大きく、バリバリの家父長制度に生きてきた人たちの父と娘の物語がわたしにはしっくりくるし、納得もでき、いろいろと回顧もする。
その中で、腹立たしさもあり、反省もあり、感謝もあり、改めて懐かしく思い出しもした。
わたしの場合、母親が緩衝材になっていたは同じで、リカちゃん(人形)パパのような理想な父親像ではない父に苛立った娘時代だったが、家を離れるとお互いにやさしくなれた父娘だったなぁ~