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古谷田 奈月「フィールダー」感想~#ぼくはこの世界のこういうところがきらいです~

「お前のものは俺のもの」
自分だけが良ければいい気質な男の子。
その名は、国民的ガキ大将でいじめっ子ジャイアン。
「漫画やアニメ」の中では、のび太をいじめるジャイアンなのに、
「映画」という違うフィールドでは、のび太たちと協力し、地球平和を目指し!?清く正しく優しく行動するのだ。
どちらのジャイアンが正しいのか?

おーい大江戸の泥棒ねずみ小僧。
お城に忍び込み、大判小判を盗んで困った町の人達に配る「ねずみ小僧」盗んだお金で人助けすることはいいことなのか?

普段は遊び人の金さんに身をやつし、事件があれば、桜吹雪の刺青をあらわに悪人たちを懲らしめる「遠山の金さん」
役人が人を騙してもいいのか?

ねずみ小僧も遠山の金さんも正しいのか?

正しさとは誰が決めるのか?
善悪とは誰が決めるのか?

刺さったー!ぶっ刺さったー!
お脳に、胸に、五感に...刺さったー!(なのに例えがヘンテコで申し訳ない...。( ;ㅿ; ))

自分が持つ、考える、価値観をまるっと疑ってしまう一冊でしたー!

<簡単あらすじ>
総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。


面白かったー!イエ───(σ≧∀≦)σ───ィ
古谷田さんの作品が好きで、また巷で話題になっていたので読んだのですが、今年のベスト本の一冊に決定。

ちなみに…朝井リョウ「正欲」が好きな人はきっと好きな作品だと思います。

大手出版社勤務の橘。
児童福祉専門の著者担当先生に小児性愛の疑いが浮上。
彼女曰く、ネグレクトされている少女を助けたかっただけ。
彼女の夫が可愛がる保護猫は愛護で、少女が私から受けているのは被害なのはなぜなのか?
彼女による告白文メールの第一章だけで、もうね...自分の価値観が揺らぐのよ。

そして、橘が所属する出版社自体が矛盾だらけ社会の象徴のような存在。
社会に一石を投じ、理念を追求し、スキャンダルを追いかけ、人気漫画は過激な性描写で炎上。

矛盾だらけの善悪に飼い慣らされ誘導される私なんぞは、ん?なる小さな違和感に目をつぶっていたけど、怒濤の展開に目を開けざるを得ない状況にさせられていくのです。

また本書は、橘が参戦するスマホゲームも並行して描かれるのだが...。
ゲームの中はリアルなのか、非現実なのか?ってことも考えさせられる。

帯のこの文章が刺さる。

「推し」大礼賛時代に、誰かを「愛でる」行為の本質を鮮烈に暴く、令和最高密度のカオティック・ノベル!(帯より)

『愛でる』
ゲームを、猫を、少女を、仲間を、信念を...
人それぞれに愛でるもの、愛で方も違う。

どれが正しくて、どれが間違っているのか?
それは誰が決める?

結局のところ...刺さるものが多くとも、本書の正しい読み方が私にできているのかは疑問なのだが....メンボクナイ(´・ω・`;)

揺さぶられるのよ。
ぐらんぐらんと揺さぶられる感覚をみなさんにも味わってほしい。
ちょっと味わえない読書体験となるはずだから。

#読書の秋2022 #フィールダー


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