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”サッカーがうまい人”にはなれなかった
「太(ふとし)って、サッカー部だけど、なんか微妙だよね。田代の方が良くね?」
高校2年生の冬、体育の時間はサッカー。先生からチーム分けするように指示を受けて、部活仲間と2人で話し合っている時の出来事だった。背後から聞こえた声に軽く振り返って、日常的に一緒に行動していた友人の発言であることを確認した僕は、
「忘れ物したから、ちょっと取ってくる!」
と出来るだけ明るい声を出して、サッカー部の部室に逃げ込んだ。
悪気はなかったと思うけれど、笑ってごまかすことも、無視してやり過ごすこともできなかった。大好きだったはずのサッカーと向き合うことが苦しくなっていた自分の気持ちに、トドメを刺された気分だった。
僕はフランスW杯がきっかけで、小学校3年生からサッカーをはじめた。
クラスの中でもビリに近いくらい足が遅くて、運動神経が悪かった僕にとって、サッカーは唯一みんなよりちょっとできるスポーツであり、プライドを持っていた。
狭いコミュニティ内ではあったけれど、レギュラーで出ることが多かった僕は、 “サッカーがうまい人”として認識されていた。
しかし、高校サッカーの引退が近づいてきたその頃、後輩からレギュラーを取られそうになっていた。下の年代から抜かされそうになるのは、はじめてのことだった。チームメイトの間で、その後輩が出た方が良いのでは、という空気が流れる瞬間が、練習中に多くなっていた。毎日の部活で、僕はそれに目を瞑って、レギュラーとして振る舞うのに必死だった。
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