口コミが少ない練馬駅前のラーメン屋
「某口コミサイトで評価3.5以上のお店は美味しい」
という話がよく聞かれるようになってからというもの、自分の外食先を選ぶ基準は少なからず変化したと思う。
外出先でご飯屋さんをパッと調べた時に、自然と数字でフィルターをかけてしまうようなこともよくあった。
ただ、数字の高さや「百名店」みたいな評価をアテにし過ぎるのは、あまり良くない。
期待感たっぷりで入店して、「これだけ期待させておいてがっかりだよ、、」と内心悪態つきながら退店したことは何度もある。
一方で、たとえ口コミが少なかったとしても、数字評価がそこまで高くなかったとしても、めちゃくちゃ美味しいお店もある。
練馬駅前にあった「みそ膳」というラーメン屋は、まさにそうだった。
全国各地の味噌ラーメンが食べられるチェーン店で、練馬駅から住宅街方面に少しだけ歩いた場所にある、老夫婦の小さなお店だった。
よく、奥さんと自転車を走らせて食べに行った。
奥さんは信州味噌のラーメンを辛くして食べるのがお気に入りで、僕は全国各地の味噌ラーメンを気分に合わせて頼んでいた。
店主である旦那さんは、耳が遠かった。
「ご注文は?」
「信州味噌のラーメンを一つ」
「え!?」
「信州味噌のラーメンを一つ!」(大声)
「信州ね」
「辛くしてください」
「え!?」
「辛くしてください!」(大声)
「辛くするのね」
「はい。あと札幌味噌ラーメン」(割と大声)
「え!?」
「札幌味噌ラーメン!」(大声)
「札幌ね」
という感じのやり取りを何度も繰り返した。
僕の声が小さいということもあるけれど、注文はいつも2回言わないと聞き取ってもらえなかった。
ラーメンは大きいどんぶりに入って出てきて、結構なボリュームで熱々だった。
ライスと餃子を一緒に頼むことも多く、お店を出る時には汗ダラダラの満腹で、かなりの満足感があった。
冬に食べに行くことも多かったので、帰りの夜道を自転車で走ると、すごく気持ちよかった。
今住んでいる家からは遠くなってしまったけれど、タイミングが合えばまた行きたいと思っていたので、昨年末に閉店してしまったことを聞いた時は残念だった。
「みそ膳」は、調べまくってたどり着いたお店ではなく、近所にあって気になっていたから足を運んだ店だった。
今までの人生を振り返ると、口コミサイトで出会った美味しいお店もある一方で、お気に入りになって何度も足を運んだお店は、生活動線の中でたまたま出会ったり、仲の良い友だちに教えてもらったり、そういう出会い方が多い。
数字やアワードみたいな評価が頭に入っていない状態で出会い、自分の舌でちゃんと「美味い、、!」と感じたお店だ。
新年を迎えたばかりの今、「みそ膳」のラーメンとの出会いを思い返しながら、やっぱり自分の目で見ること、リアルに感じることを大事にしたいなと思う。
顔も見えない、他人が付けたコメントや数字に、引っ張られすぎてはいけない。
新年早々、目を背けたくなるような出来事が起きて、悲しいことにその出来事にかこつけて、人の善意を利用したデマがネット上にはたくさん流れている。
自分の趣味の分野でも、ソースすら示さずに、信憑性のないそれっぽい情報を流して、人の関心を惹きつけようとする人がたくさんいる。
そういうものに、自分の感情を乱されたくないし、時間を奪われたくないと思う。
自分の人生を、他人に決めさせてはいけない。
他人の価値観から少し離れて、自分の価値観を大事にしてあげたい。
「みそ膳」で何の先入観もなく目の前にあるラーメンを「美味い、、!」と感じた、あの時間が、今年たくさん迎えることができますように。
Good Bye / Yogee New Waves