「羽田空港行き」を見て思い出すこと
実家から羽田空港へのアクセスが良かったこともあって、小さい頃は空港に遊びに行くことがあった。
乗り物全般が好きだったので、空港の屋上のような場所に、離着陸する飛行機を眺めに行った。
ポケモンジェットが話題になった時にも、観に行った記憶がある。
羽田空港に遊びに行こうか?と言われると、心が弾んだ。
ただ、色濃く残っている記憶が二つあって、それらは飛行機のことではなかったりする。
一つは、ラーメンをお上品に食べていたCAのお姉さんたちのことだ。
ラーメンは、ずるずるっと音を立てて啜るものだと教えられていた。
いつもは「なるべく音を立てずに咀嚼しなさい」と言われて育ったけれど、ラーメンは例外であり、ずるずる音を立てないといけないもんだと思っていた。
しかし、近くの席で五目そばを食べていたCAのお姉さんたちは、麺をずるずるっとしていなかった。
麺を持ち上げたかと思うと、折り畳みながらレンゲの上に丁寧に置いていく。
麺をレンゲの上に乗せたまま少し談笑などして、時間が経ってからようやく麺を口の中に入れていた。もちろん音は立たない。
ラーメンをあんな風に食べる人がいるのか、と驚いて目を離せずにいると、僕の視線の先に気づいた母親が「変わった食べ方だね、あんな風に食べてたら麺が伸びちゃうじゃん」と言った。
CAのお姉さんたちが席を立った後、食べていた五目そばの器の中が少し見えた。
結構な量の麺が残っていて、「お母さんの言う通りだな」と思った。
同じように五目そばを頼んでいた僕と母親は、いつも通り麺をずるずる啜って残さずに平らげた。
この出来事以来、ラーメンをできるだけお上品に食べようとする人を見ると、「その食べ方だと麺がのびてまずくなるよ」と思うようになった。
もう一つの記憶は、お土産屋の一角のテレビで流れていたスヌーピーのアニメだ。
僕は空港に行くたび、それに齧り付いて長時間見ていた。
羽田空港に行く=スヌーピーのアニメが見られる、くらいにも思っていたと思う。
母親はそんな僕の姿を見ていたので、羽田空港に遊びに行った時に買ってくれるものは、飛行機のおもちゃとかではなくてスヌーピーのビデオだった。家に帰ってからも、僕はボーっとスヌーピーのビデオを見ていた。
僕がスヌーピーのキャラクターの名前を大体覚えているのは、羽田空港のお土産屋のお陰だ。
京急に乗って「羽田空港行き」という表示を見たりアナウンスを聞いたりしたときに僕が思うことは、「旅行行きたいなあ」ではなくて、ラーメンを食べるCAの姿やスヌーピーのアニメのことだったりする。
Travel Agency / シャムキャッツ
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