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「ボ育て」サバイバル(2)

さて、前回はボ育てサバイバルの最初の心得として「ゲームを嫌いにさせない事が大切」という話をしました。また、ボードゲームを遊ぶにあたっては、ルールにどおりにできること、負けをみとめられること、カードや物をぞんざいにあつかわないこと、というスキルが必要な場合が多いという話をしました。

これらのスキルを身につける手段は、生活の中や遊びの中にたくさんあります。おにごっこや、ままごと、ブロック遊びなど、直観的に遊べる遊びの方が子どもにとってわかりやすい場合も多いですが、そこまで話を広めると育児全般の話になってしまうのでまたの機会にお話しすることにします。

ここではボードゲームに絞ってお話をします。最初に、おすすめするのは前回もお話したとおり神経衰弱系ゲームです。

同じものをみつけてみよう

神経衰弱と言うと、トランプをめくって同じ数字のペアを見つけたらとる、という絵が思い浮かぶとおもいます。しかし前回も言ったとおり、同じ数字かという判断をするためには数字という記号の違いを区別する必要があり、それは発達段階よっては難しい場合もあります。数字がわかるようになってからボ育てを始めるのであればそれでもいいですし、もっと言ってしまうとその年齢からボ育てを始めても遅くはないと思います。

しかし、数字がわかる前からボ育てをしたいんだ!という熱意のある人には「絵のペアを見つける」神経衰弱系ゲームをお勧めします。

「メモリーゲーム」で調べるといろいろと出てくると思いますので、子供が興味をもちそうなテーマのものを選んでみてください。

最初はカードの使い方もよくわからない事が多いため、カードが折り曲げられてしまうことも覚悟しておきましょう。カードが折り曲げられるのは子供用ゲームの宿命みたいなもので、折り曲げた後が将来、よい思い出になる事もあると思います。

しかし、折れたカードは目印になってしまいますし、買いなおすにしてもポンポン買えるほどの値段ではないのも事実です。そんな場合は100均で売っている「絵がかかれたゲームカード」を探しましょう。そのカードゲームを2セット買い、本来のルールはいったん無視して、神経衰弱ゲームのカードとして遊ぶ方法もあります。

ルールはどんどん変更すべき!

前回、ルールどおりにできることが大切という話をしましたが、それはルールを変更してはいけないという意味ではありません。むしろルールは子供の能力にあわせてどんどん変えていくべきです。変えたうえで、そのルールに沿ってプレイできるのであれば全く問題ありません。

神経衰弱系ゲームは、①そのカードがどこにあったか覚えておくというスキルの他に、②カードをめくって表にする③同じ絵柄であることを認識できる、というスキルも必要です。もし、①の「場所を覚える」ということがまだ難しいようであれば、①の要素をはずしたルールに変更しましょう。つまり、一度めくってペアにならなかった場合も、カードを戻さずに次のカードをめくってよい、とするのです。めくっていくうちにペアがみつかればそのカードをとれる、このようにすることで②と③のスキルを培うことができます。もちろん「ルールに沿ってゲームをプレイする」という力もつきます。

上記のルールに変更した場合、交互にプレイしたとしても必ず1ペアずつとれるので勝ち負けはつかないと思いますがそれでまったく問題ないのです。前回話したとおり、子供は負けると悔しくなって投げ出してしまうということも多いため、ゲームというものは負けても大丈夫なんだという学びは別の機会に、くらいの気持ちでとりくみましょう。極端な話、負けたくやしさの克服はじゃんけんでも学べます。

ボードゲームにはできるだけよい印象をもってもらうようにしましょう。はじめは勝ち負けは無しにして、そのゲームが終わったら「カードをたくさんとれたね」と成果を喜びあう。子供と一緒に達成感を味わう。そんな風にしてボードゲームって楽しい!という気持ちを抱かせるのはボ育てサバイバルで生き残る重要事項の一つです。

違うルールで遊びはじめた。さてどうする?

さて遊んでいるうちに子供が違うルールで遊び始めたとしたら、あなたならどうしますか?

それはまったく残念に思う事ではなく、むしろ喜ばしいことです。子供の創作性が発揮されたということでもありますし、違うルールだとしてもそのカードに興味を持って遊びたいと思っているということには変わりありません。

余談ですが、ウィトゲンシュタインという哲学者が「言語ゲーム」という哲学概念を思いついた時の逸話で面白い話があります。草原で子供がボールを蹴って遊んでいるのをみて、サッカーで遊んでいるのかなと思っていたけど、突然ボールを持って走り出した子がいて、その後はみんなもそれに合わせてボールの取り合いのようになった、という話です。そこから、彼は言語ゲームという概念を確立させていくのですが、それは置いといて、ここで言いたかったのは本来子供は自分たちでルールを思いつき、それを変えながら遊ぶものだということです。

ルール通りにしなければならない世界は小学校に入れば嫌というほど知ることになります。せめてゲームくらいは自分たちでルールも変えられる世界を味合わせてあげたいものです。子供が遊び始めたルールにたいして「間違えてるよ」と否定するのではなく「そのルールもいいね」などと言って、子供が新たに創作したそのルールに合わせて遊ぶ余裕があるといいですね。

ゲーム後も楽しい「ちょっぴり感想戦」

さて、ルールは変更していい、むしろ子供の発達段階にあわせて変えるべきだという話をしました。せっかくなので余裕があれば、使ったカードや部品、結果について少し語り合ってみましょう。

カードをたくさん集められたら「カードをたくさんとれたね」。少し数がわかってきたら「カードを8枚とれたね」など結果を言語化して語ってみる。また、カードの絵柄について語るだけでもいいのです。「このカード、ネコが二匹いるよ。かわいいね」「この人はごはんを食べているのかな?」などカードを指さして語って聞かせるだけでも、言葉を知るきっかけ、幼児教育にもつながることになります。

さらにゲームの後にそのゲームについて語るのはゲームについて振り返る「感想戦」の練習にもなります。ゲーム後にそのゲームを振り返る感想戦は、ゲームによる学びを深める大切な要素です。

とはいえ、無理やり学びの要素を入れようとすると楽しくなくなります。特に「今回なぜ負けたと思う?」「こうすれば勝てたかもね」のように勝因、敗因について分析して学びにつなげるのはまだまだずっと先です。下手すると大人でも「勝ち負けの理由を分析するのは嫌だ」という人も多いでしょう。

なので、この時期の感想戦はゲームの結果やカードについて語る「ちょっぴり感想戦」です。そのうち、ゲームのここが面白かったね、このシーンは失敗しちゃった、などゲームの内容について語ることが楽しくなってくることでしょう。ちょっぴり感想戦はあくまで自然に。感想戦と幼児教育、ボードゲームと学びについては別の機会にお話しします。

さて、神経衰弱系ゲームがよいといっても、もちろん毎回それだけやっていても飽きてしまいます。次回は大人も手加減せずに本気で遊べる、子供向け協力ゲームを紹介したいと思います。

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