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ユング/MBTI考察: NeとNiの違い (1) そこから見えるMBTIの限界

 個人塾&実用心理分析のOKZKオカザキです。MBTIは4心理機能モデルを用いていますが、それを8心理機能モデルへと拡張したい、という記事を書こうとしていたのですが、前置きだけで1記事分の量になってしまったので、あらかじめこちらに出力することにしました。

はじめに

 MBTIでは基本的に4心理機能モデルを採用しており、「自我エゴ (意識)」に関する記述しかなされません。それは「シャドウ (無意識)」にまで話を広げると、不確実な要素が多分に含まれるからなのかもしれません。しかし、実際に私が塾で生徒と向き合い指導/実践する中においては、4心理機能モデルではかなり限界があると言わざるを得ません。それはもう多くの方も感じられていることでしょうが、ここで改めて私なりの実例を一つ挙げたいと思います。

 「MBTIへのいざない」には、こうあります。

誰もがこれら8つの心の働きすべてをもっており、それぞれをある程度まで発達させているのである。何度もいうが、誰もがどれをも使っている。しかしすべての機能が同等に個人の性格のなかで働いたり、表現されたりするわけではないのである。タイプダイナミクスによって、これら8つの自分の心的過程における自分のなかの優先順位を知ることができ、さらに序列づいたそれぞれの心の働きの特徴について理解を深めていくことができる。(p. 33)

 …そして個人内で最も優先順位の低い機能は劣等機能 (inferior) と呼ばれ、大きな影響力をもっているが、個人のなかで最も使われない心で、当人の気づかないところで使われていることが多い。理論の全体を知るためには、さらに残っている4つの心的機能と心的態度の組み合わせについても説明しないといけない。これらの機能は、私たちの気づくことのできる範囲から遠いところで作用し、無意識に隠され、たいていの場合直接的にアクセスすることが困難といわれる。この心を「もう一人の自分」を生成するダイナミクスのひとつとして位置づける説もある。「もう一人の自分」とは、自分とは反対の性で表される内なる存在である。本書ではすこし論点がずれるので省略するが、簡単にいうと、「外向思考」を指向する男性が、ときどき彼の奥深いところにある心理的な女性性の部分が、突如、内向感情の作用がやさしさや養育的な行動として表れ、本人でさえ驚いてしまうときがあるといったことがそれである。が、本章では、基本的な心的機能 (感覚・直観あるいは思考・感情)と心的態度 (外向・内向)からなる8つの組み合わせが、意識と無意識のなかで目的をもって作用しているという話にとどめることにする。序列づけられた4つの機能の作用と、それがいかに私たちの気づきや日々の選択に関わっているかについて理解してもらうことがまずは大切だろう。(p. 34)

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(太字はOKZKの強調)

 まず、誰もが8つの心理機能を持っている大前提があり、4つだけで各タイプ像を記述しようとすること自体に無理がある(完)、ということなのですが、まあ、あえてそこにネチネチと塩を塗り込む様な真似をしたくなるのがINTP論理学者というやつでな。ちょっと聞いて下さいよ。

問題提起

 INTP論理学者の4心理機能は以下の通り。
Ti内向思考Ne外向直観Si内向感覚Fe外向感情
この4つだけでもINTP論理学者像をかなり説明してくれるのですが、私が何かを瞬間的にひらめいた時、それはNi内向直観を用いているはず、という違和感があるのです。心理機能の理解を深めていくと、Ne外向直観的なアイデアの出し方とNi内向直観的なアイデアの出し方は、その過程プロセスは全く別物であると感じます。しかし、思いつくアイデアが大きければ大きい程、Ne外向直観 / Ni内向直観どちらか片方で辿り着くのではなく、Ne外向直観Ni内向直観Ne外向直観Ni内向直観→…と互いに協働しながら前に進んでいくはずです。
 ですが、INTP論理学者の心理機能にはNi内向直観が記述されていないため、「あなたのアイデアはNe外向直観由来です」と言われ、「そうか…私はNe外向直観ユーザーか。じゃあNi内向直観ってどんな心理機能なんだろうな?無意識の領域に入ってるそうだから、そんなに使ってないんだろうなNi内向直観=閃き、かぁ。なんかかっこいいなぁ…」という先入観を持ってしまいがちです。つまり、16タイプを4心理機能モデルで記述した場合、残りの影の心理機能4つはとても遠いイメージを持ってしまいます。これが、8つを4つに簡易化して、自我エゴだけを記述する弊害へいがいです。
 指導者が生徒を見る場合に、残り4つの心理機能が見えなくなる (影に入る)と、目の前の生徒の実像ではなく典型的タイプ像の幻影を追ってしまう危険性があるのです。きちんと、その人の無意識 (影)に入っている残り4つも見ようとする意識は、絶対に必要です。そして、ユング達人が16タイプ分類をしなかった理由は、8つの心理機能の各成長度合いを全て1つ1つ見抜こうとしていたからだと推察します。典型的タイプ像に押し込むことは、統計的には価値があっても、対面指導する上ではむしろ目くらましになる可能性があります。
(「MBTIへのいざない」にもその危険性への警鐘は再三なされていますがね。)

もし、タイプ理論が人を型にはめるものだったり、人に序列をつけるためだったり、はたまたレッテルを貼り付けたり、習慣を予測するために使われたとしたら、真に人の多様性を尊重することは不可能となってしまうので、そのへんは注意してもらいたい。固定観念を生み出すだけのものに、いったいどんな価値が認められるのだろうか。(p. 29)

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タイプ像の幻影を追うな!

 INTP論理学者は②補助機能にNe外向直観を持つため、比較的、直観資源リソースを沢山持っています。そのため、普段からNi内向直観も起きやすいのです。
………直観主機能の人達ほどではありませんがね。当塾のENTP討論者 /ENFP広報活動家 /INFJ提唱者の生徒の直観は強烈です笑。多分、類は友を呼ぶのでしょう、当塾には直観型の生徒が多い…というか長続きするんですね。特に、受験生のINFJ提唱者さんを日々指導した経験は、Ni内向直観とは何たるか?をよく学ばせてもらう良い経験になりました。生徒はいつも新しい気付きを与えてくれます…今後、書ける範囲でそれらも記事にしていく予定です。

 …閑話休題。
 そもそも直観とは、抽象ちゅうしょう化の技術であり、その対極が感覚の具体化です。抽象とは「複数の物事に共通な属性を抜き出し、抽出ちゅうしゅつし、これを一般的な概念としてとらえること」。直観のリソースを多く持つ限り、Ne外向直観ユーザーは当たり前の様にNi内向直観を使っているし、その逆もまた然り。その頻度、または初期位置デフォルトポジションの問題です。Ne外向直観Ni内向直観の違いが顕著に表れるのは、やはり時間の感覚でしょうね。
 Ne外向直観は「外部条件を積極的にゆがめて連想していく」感覚です。目の前の人や物事を、「何となく / ぼんやりと / 曖昧に」しか見えていません。複数の物事に共通する規則性パターンを見つけ出す (抽出する)ために、自然とそういった見方を好みます。よって「仮にこうしたら… / あの人はこう言ってたけど… / でも実は…」などの仮定を置きたがる (勝手に解釈したがるだから疎まれ…ゴホン)のです。それを積み重ねていった結果、ある推論にようやく辿り着くイメージ。従って、Ne外向直観的なアイデアには、到達するまでにある程度の時間がかかる (違う表現をすれば「こうで、こうで、もしこうだとすれば…多分こうだな」みたいに複数ステップを踏む、それが簡単な問題で一瞬でやればNi内向直観の様には見えるが、難しい場合は長時間ああじゃないこうじゃないと試行錯誤する、その姿が「好奇心」の様に見える)。
 一方、Ni内向直観は「すでに構築された内部記憶システム群と自発的に連結する」感覚です。目の前の出来事に対して、過去の似た経験や知識のイメージやアイデアが瞬間的に飛び出てくる。なぜそうなるかと言うと、脳内の記憶が強固に連結された状態で収納されているからです。例えば、六角形(⬢)を見て蜂の巣のイメージが瞬間的に湧く。そこに理由はなく、脳内で近しい情報として分類 / 連結されていたからです。よって「こうに違いない! / あの人の言った意味はこれだ! / あそうか!」などの思い込みが激しい (勝手に決めつけるたまに大恥を…ムフン)のです。従って、Ni内向直観的閃きはほんの一瞬でなされる (思い出せないものをようやく思い出せた時のあの記憶が連結する感覚、アハ体験、あくまで連結が一瞬という意味「あ、なんか閃きそう…う~ん………?あ出たパッ」はあり得る、自分でも制御できないのが「閃き」)。
 直観機能、抽象化、Ne外向直観Ni内向直観も「」という言葉が相応しいでしょう。本質的には、直観のリソースを持った人が、それをextraverted外向された状態を指向すればNe外向直観だし、introverted内向された状態を指向すればNi内向直観になるだけで、本質的には「連なり (繋がり)」を探すと言う点でNe外向直観Ni内向直観も同じことです。用いる場 (外界⇆内界)が違うだけ。ただし、そのプロセス上、アイデアに到達するまでの所要時間が異なり、Ne外向直観は比較的長く、Ni内向直観は一瞬Ne外向直観に対しても「閃き」という言葉がしっくりきてしまうこともあると思うので、使い分けは注意が必要です。はたから見ていて、最も分かりやすいのがNe外向直観で、最も分かりにくいのがNi内向直観とは、なんとも妙ですね。しかし実用的には先程書いた様に、Ne外向直観Ni内向直観Ne外向直観Ni内向直観→…と互いに協働するので、その違いを明確に自覚するのは難しい。
 つまりMBTIへのいざないにある通り「誰もがこれら8つの心の働きすべてをもって」いる訳ですから、誰もがNi内向直観を経験しているのです。このNi内向直観の経験とは、脳内に一瞬で答え(イメージやアイデア)が浮かび上がる鮮烈な経験であるので、多くの人が「私はNi内向直観主機能だ!(←Ni内向直観)」と勘違いする (思い込む)のも無理ありません。しかし、Ni内向直観主機能のINFJ提唱者INTJ建築家は、恐らくNi内向直観に振り回されて恥をかかされた経験が少なからずあるはずなので、むしろNi内向直観を嫌っている (恐れているが正しいか?)と思います。自慢できる程度のNi内向直観ユーザー / Ni内向直観万歳 / INFJ提唱者INTJ建築家に憧れを持てる程度であれば、Ni内向直観主機能ではないでしょう…私も三日くらい経験してみたいものです。
 少し脱線しましたが、話を元に戻すと、「誰もがNi内向直観を経験しているはずなのに、MBTIの4心理機能モデルではNi内向直観を記述できないタイプがいる」…このことが、何やら神秘的なNi内向直観を更に神秘的にさせたり、Ne外向直観Ni内向直観の違いって何?とか色々と誤解を生んでいる気がします。普段の「あそうだ!この前の〇〇しよう!」という大したことない閃きを含めば、誰でもNi内向直観を体感しているし、日常的なものだと言える。「なんで急に思い出したんだろう?」とか「なんで思い出せなかったんだ!」とか、自分でも制御不能な点が、Ni内向直観の神秘的な面ではありますがね。

結論

 やはり即ち、8つあるものを4つで解釈している以上、実用的にかなり無理がある、というのが、私の体感です。そしてマニュアルに書いてあるほど、無意識領域の機能をほとんど使っていない訳ではないと、私は考えています。だからこそ、4心理機能モデルを8心理機能モデルへと拡張することが、教育や指導の現場に投入する際には必須だと考えているのです。
 またこれは4心理機能モデルにおける劣等機能にも同じことが言えると思うのですが、よく劣等機能はほとんど使わないと記述されていますが、その先入観は本当に正しいのか?むしろ偏見を生む枷にならないか?と危惧しています。私のINTP論理学者の劣等機能はFe外向感情ですが、幼少期からかなり強いFe外向感情が出ていたと自覚しています。それは複数要因あるので詳しくは別記事にしますが、特に顕著な影響を与えるのが、家庭環境です。私は物心ついた時から母子家庭でISFJ擁護者の母に育てられ、強いFe外向感情の影響を受けました。そんな昔の私を指導する場合、「この子はFe外向感情は弱いだろう」という指導者の先入観は、きっと癪に障ったでしょう。しかし確かに、私のFe外向感情の中にはいつもTi内向思考面影おもかげが混ざっているので、いびつだったでしょう。しかし当時の私なりにFe外向感情を大切にしようと思った気持ちは本物でした。
 「劣等機能だからこの子はこうだろう」という予測を妄信してはいけない。ユング心理学の「類型論」で示す8つの心理機能は、あくまで「器」であり、環境要因によって注がれる「心的エネルギー」の流動、即ち「特性論」まで考慮しなければならない。空っぽの「器」を見ても、そこに中身はない。
…それはまた長くなるので、またいつか。


それではまた!


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