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伝統工芸を、新たな領域へ。「砂子硝子」が示す可能性

PROJECT NOTE
砂子硝子「Tsumugu」

オクノテは、湯島アート様の新たな挑戦「砂子硝子(すなごがらす)」シリーズ の商品開発に携わり、プロダクトデザイン、パッケージデザイン、ロゴデザインを担当 しました。
このシリーズは、初代から受け継がれる 砂子加飾(すなごかしょく) の技法をガラスに応用し、伝統を現代のライフスタイルに馴染む形で再解釈した革新的なプロジェクト です。

本記事では、「伝統技法を新たな領域に展開する意義」 について掘り下げながら、プロジェクトの舞台裏をご紹介します。



「砂子硝子」とは?

砂子加飾とは、極めて細かい金箔や銀箔を紙に撒き、独特の質感と輝きを生み出す技法です。湯島アート様は、明治時代からこの技術を継承し、和紙や襖紙の装飾を手掛けてきました。

「砂子硝子」は、この伝統技法をガラスに応用した全く新しい試みです。
紙とは異なるガラスの特性を活かし、光の透過や反射を取り入れた独自の表現を実現しました。

湯島アート様との取り組み



「Tsumugu」が生まれるまで

今回のプロジェクトでは、シリーズの新作として 贈答用スモールプレート「Tsumugu」 を開発しました。


このプロダクトの特徴は、伝統的な砂子加飾を用いながらも、ガラスならではの美しさを引き出すデザインにある ことです。

新技法の確立

©︎湯島アート

紙とは異なるガラス素材に砂子加飾を施すには、新たな技術開発が必要でした。金箔の粒子サイズや散布の均一性、定着技法の研究を重ね、試行錯誤の末に繊細なデザインを実現。

型を用いた新しい表現

©︎湯島アート

砂子加飾は通常、職人の手作業による偶発的な美しさが魅力ですが、「Tsumugu」では 型を用いることで精緻なデザインも可能に。これにより、従来の工芸技法では難しかった グラフィカルな表現 や 現代的なパターンデザイン を取り入れることができました。

ギフト需要に応えるプロダクト設計

©︎湯島アート

砂子加飾の繊細な美しさを最大限に生かしながら、贈答品としてふさわしい佇まいを追求。パッケージデザインも同様に、伝統と洗練が調和するよう設計しました。


伝統工芸の新たな可能性

「砂子硝子」の試みは、単なる技術の転用ではなく、伝統技法が持つ価値を拡張する試み です。伝統工芸は「守る」だけではなく、「生かす」「進化させる」ことで持続的に継承されていく もの。

今回のプロジェクトを通じて、次のような気づきを得ました。

1. 素材の制約を超えることで、新たな表現が生まれる

砂子加飾は元々、紙や和紙に施される技法でした。
しかし、ガラスという異なる素材に応用することで、光を透過する独自の表現が生まれ、より多様な用途が生まれました

このように、伝統技法を異分野に展開することで、新たなクリエイションの可能性が広がると考えます。

2. 「伝統×新技術」の組み合わせが未来を切り拓く

伝統工芸は、一見すると昔ながらの手仕事の印象が強いですが、
実は 新しい技術や加工法と組み合わせることで、より高度な表現が可能になります

砂子硝子の開発では、

  • 金箔の加工精度向上

  • 型によるパターン化

  • 耐久性の強化

など、伝統の手仕事と現代の技術が融合することで、新たな価値が生まれました

3. 伝統工芸の市場を広げるには「使うシーン」を再定義する

伝統工芸品が抱える課題の一つは、「どのように日常に取り入れるか」という点です。

砂子硝子は、工芸品としての価値を保ちつつ、ギフトや日常使いの器としても取り入れやすいデザインを目指しました
伝統の技法を活かしながら、現代のライフスタイルにマッチする形に落とし込むことで、新たな顧客層にアプローチできるのです


未来につむぐ工芸のあり方

©︎湯島アート

「砂子硝子」は、単に新商品を生み出しただけではなく、伝統技法の新たな可能性を示すプロジェクト でもありました。

この試みが成功した背景には、「伝統を守る」ではなく「伝統を進化させる」という視点 があります。
湯島アート様のように 長年培われた技術を異分野に展開することで、新たな市場と価値を創出する ことができるのです。

オクノテは、デザインの力を通じて、伝統工芸の新たな可能性を広げるお手伝い を続けていきます。
今後も、職人の技と現代のニーズをつなぐプロジェクトに携わりながら、「伝統の未来」を共に考えていきたい と思います。

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