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チームが同じ方向に同じ強さで進んでいくこと

東京でイタリアンレストラングループ「ブリアンツァ」を経営しているシェフの奥野義幸です。六本木ヒルズに本店の「ラ・ブリアンツァ(La Brianza)」があるほか、大手町や麻布十番、日本橋などに、合わせて6店のグループ店を持っています。

このnoteを読んでくださっているなかに「ブリアンツァ、行ったことがある!」という方がいらっしゃればとてもうれしいです。ぜひまた、各店舗にいらしてくださいね。

3月には、アメリカのロサンゼルスに“TOKYO ITALIAN”をテーマにした「MAGARI Hollywood」というレストランを開きました。そのために1カ月半ほどアメリカに滞在して、先日日本に帰ってきました。

アメリカに進出するのは、長年の夢でもありましたし、何よりコロナ禍で苦しむ日本の飲食店の仲間たちにとっても明るいニュースになればと思い、ロサンゼルスで開店準備に明け暮れ、無事オープンすることができました。

Magari Hollywood

「シェフ」から
「社長」と呼なれるようになった


2003年に麻布十番に「リストランテ ラ・ブリアンツァ」(現・「ヴィア・ブリアンツァ」)をオープンして以来、たくさんのお客様や先輩シェフ、スタッフたちに支えてもらい、気づけば21年間もシェフを続けることができました。

まわりからは「奥野さん」や「奥野シェフ」と呼ばれる以外に、お客様や同世代のシェフ仲間からは「おっくん」と呼ばれてかわいがってもらえているのは、本当に光栄なことです。

スタッフからは「シェフ」と呼ばれることが多いですが、2021年7月に130席の大きなレストラン「ブリアンツァ・トーキョー」を大手町にオープンすることになったときに初めて「社長」と呼ばれるようになって驚きました(シェフ仲間から「社長」と呼んでからかわれることはありましたが笑)。

それまで、新しい店をオープンするときは、僕が一緒に働いたことがあるスタッフに任せてきました。しかし、「ブリアンツァ・トーキョー」はシェフの内野拓などのキッチンスタッフは一緒に働いてきた料理人ですが、ホールスタッフにはこのお店で初めていっしょに働く人たちもいます。そのスタッフたちにとって僕は、シェフではなくブリアンツァグループの「社長」なんですよね。

それは、「良いか悪いか」ということではなく、レストランが成長していく次のフェーズに入ってきたという意味だと僕は思っていて、そのためにもグループもそうですが、僕自身も変わっていかないといけないと改めて強く思ったのです。

「オーナーシェフ」は、
シェフである以上に経営者である

レストランで「シェフ(Chef)」とは、厨房を仕切る役職のことです。なかでもお店のオーナーでもあるシェフのことを「オーナーシェフ」といいます。オーナーとシェフが別々の時もありますし、ソムリエがオーナーの場合もあります(その場合は、オーナーソムリエと呼ばれます)。そういう意味では、僕は「オーナーシェフ」です。

今はおかげさまでたくさん店舗もありますし、ブリアンツァグループ以外のブランドのコンサルティングや店舗のプロデュースをしているので、厨房に立てる日は限られています。それでも店にいれば大切なお客様にお会いできて直接御礼も伝えられます。何より料理が好きですから厨房にいること自体が好きということもあります。

ですので時間がある限り、たとえ1時間であっても六本木の本店の厨房に立って料理をしています。ですから「あれ、おっくん、日本に帰ってきてるの?」と、SNSをチェックされているお客様に驚かれるぐらいです(笑)。

僕は、1972年生まれで、料理業界では「職人気質で乗り越えろ」と教えられてきた世代に当たるかなと思っています。それもあって、店を始めたころは「ブリアンツァの料理は、自分がよく作れる」とすべてを自分でやってしまう根っからの料理人でした。

ですが、2016年に本店としてオープンさせた六本木本店がグループ3店目になると、スタッフも増えて、一人では見切れなくなってきます。総務や人事、経理といったバックオフィスのことやPRまで全部自分が決めて指示を出してやっていたわけですから、無理もありません。

当時を振り返ると、「お金が出ていく」というのが経営者として怖かったんだと思います。だから自分の時間を使って自分で全部やって、その分少しずつ店のスタッフたちにしわ寄せがいっていました。もちろん当時は「スタッフを苦しめてやろう」という気持ちなんてなくて、むしろ「スタッフのために」という思いでやっていたんですよ。

そんな時期に、飲食業の未来について考えられている本田直之さんやマッキー牧元さん、伊藤章良さんといった方々が口を揃えるようにして「日本の飲食店の課題は、従業員を休みもなく働かせることになんとも思わず、無自覚に搾取していることだよ。そういう業界に未来はないから、変えていかないと」とおっしゃっていました。

諸先輩方の言葉は、僕の心の中にすごく残っていて、それがきっかけで経営を整えてスタッフの待遇もきちんとし、外の業界の人に堂々と見せられる会社にしようと決意しました。「オーナーシェフ」としての仕事をきちんとしようと考えるようになったのです。

“チーム・ブリアンツァ”の
みんなにこそ読んでほしい

まだまだ目標の途中ではありますが、他の業界と比べても遜色のないような待遇をスタッフにしていくためには、僕自身がレストランを飛び出して外の仕事をしていかないといけませんし、もちろん新しい店舗も展開していく必要もあります(今年4月には、茨城県つくば市にもパスタ専門店「パスタ マガーリ」を開店します)。

そうなってくると、もう自分一人でブリアンツァグループを見ていくのは無理な話で、今はバックオフィスの機能に専門家に入ってもらったり、PRやブランドデザインなども外部の方にお願いしてチームを作って進めるようになりました。昔は、「全部自分で」なんて考えていた「料理バカ」なのに、人は変わるものですね。今では「おっくんは、シェフだけど人に任せられてすごいね」って言われています(笑)。

外部の人たちといっしょに仕事をしてみて気づいたのは、PRやデザインを専門的にやっている人の仕事の質はとても高いということです。当たり前ですが、レストランの人間では考えられないようなクリエイションが生まれる。仕事はプロに任せるべきだなと思います。

そういった意味では、最初にもお話ししたように一緒に働いたことがないスタッフが増えたことや、外部の方も含めたセクションごとのチームもできたことで“チーム・ブリアンツァ”がとても大きくなってきています。

このnoteでは、もちろんたくさんの方にブリアンツァグループのことや、オーナーシェフである僕の想いを知っていただけたらと思っていますが、じつはそれと同じくらい“チーム・ブリアンツァ”のスタッフのみんなにも読んでもらいたいと思っています。

奥野さんはいま、こんなことを考えているのか」とか「いつも言っていることの意味は、シェフのこんな経験から生まれたことだったのか」ということを知ってもらうことで(もちろん、「社長ってシェフだったのか!」でもいいんです笑)、チームが同じ方向に同じ強さで進んでいくことが大事だと思っています。チーム全体の成長が必要なのです。

これから少しずつですかnoteを更新していきたいと思っています。どうぞ末永くお付き合いをお願いできたらと思います。

ラ・ブリアンツァ」オーナーシェフ
奥野義幸

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