【うつ闘病記】地宙人、家を買う - 09_たらいまわし

 ほどなくして、会社の上司(テツジン主任、課長、ネチネチ部長)にも自分がうつ病であることを告げた。黙っているには、あまりにも休みがちだったし、仕事をしていてもミスや注意力散漫による仕事の遅延の収集が付かなくなっていた。
 上司らからは、すぐに暫くの休養を取ることを勧められた。しかし、ピンちゃんとの家族会議で、傷病手当が出るとはいえ、休職により収入が落ちることは現状キビしいという判断になっていた。なにより、自体はそこまで深刻ではなく(なにせ一応は会社に行けていたし)、休む必要なんてないと思われていたかもしれない。
 医師に相談し、一定の配慮をもらいながらであれば働ける(就業能力がある)という診断書を書いてもらい(本人が「仕事できる」って主張すれば医師も書かないわけにはいかないだろうな、と思う)、会社に提出した。
 会社としても扱いに困ったものである。処置としては、業務量を格別に少なくする。定時帰りをする。ミスしても過度に怒らない。等々、可能な限り低ストレスの状態にしてもらった。IT企業なので通常でも超多忙とはいえ、さすが大手メーカー系の子会社だけあって、うつ病患者に対する扱いは手厚かった。
 そうこうしている間でさえ、うつ病の症状と副作用で意識が遠のいたり(そのまま眠ってしまう)、集中できなかったりで、仕事がままならない状況が続いた。
 このように状況が悪くなると薬のせいにして、次々に違うくすりを試し、量も徐々に増えていった。とはいえ、同時に処方できるうつ病の薬というのには数の制限があるらしく、十何種類もの薬漬けという状況にはならなかったわけだが。
 治療をしても少し良くなったり、また悪くなったりと一進一退で、一向に完治する様子はなかった。本来なら、やはりすぐに会社を休むべきだったのだ(なんでもあとになって実感しますね)。

 上司たちの意見として、今の組織(プロジェクト)にいるのが良くないのではないかということで、ネチネチ部長のキモ入れで、全く異なる事業部へ一時的にまわされることになった。
 上司たちからすれば、真にボクの身を思っての対応だったと思うのだけれど、当時のボクは「見捨てられた」と思った。
 受け入れ先の部長は最初こそ笑顔で「よろしくね」と言ってくれたけれど、実際のボクの扱いは部下にまかせっきりだった。その部下(ぼくの上司ですね)は、明らかに腫れ物を扱うように僕に接してくるのがツラかった(とはいえ当然ですよね。ボクが同じ立場でもそんな感じで接すると思います。何の思い入れも無い赤の他人ですから)。
 部署が変わって、仕事が変わって、周りの人が変わっても、ボクの調子はますます悪くなった。簡単な資料を作ったり、資料の簡単な修正を行ったり、一日延々と資料をコピーしたり、Excelマクロの勉強をさせてもらったりと、本当に簡単な作業しか与えられなかったにもかかわらず、仕事中に居眠りしてしまったり、単純ミスをして注意されて、気分が悪くなって帰ってしまったり(あちゃちゃ、これはいけない)、とても仕事が出来るような状態ではなかった。
 このことが移動先の部長からネチネチ部長に伝わり、「とてもじゃないが仕事が出来る状態ではないのではないか。病気はわかるが、もっとしっかりしてもらわなければ困るよ」と直接に注意されてしまった。さらには「君は休むべきだ」とも改めて言われてしまった。
 それでもボクは「今の家の経済状況からすると休むことは出来ないんです。何とか働かせてください」と哀願した。

 そんな状況の中、一筋の光が指した。入社当時に一番初めに面倒をみてくれた、プライベートでも交流があったゴスペル課長(通称の通り、クアイア団体に所属していて、その公演に何回かお邪魔しました)が、周りが言うほどボクのうつ病の状態は酷くはないと思うから、元の部署で違う仕事をしてみないかと提案してくれたのだ。後から聞いたところによるとネチネチ部長も受入に関して尽力してくれたらしい(人は意地悪で怖いだけではないのだ)。
 今いる部署からは村八分にされていると感じていた(被害妄想です)うえに、もう仕事を休職するしか手が無いと思っていたボクは、このゴスペル課長の言葉が救いのように感じた。
 かくして、元の部署(特許庁の仕事ですね)の別の提案系の仕事を任されることになった。簡単にいうと、システム刷新に関する論文を書くような仕事であった。全く新しい未知の仕事という点に嫌な予感がするが、このときのボクは、自分が見捨てられなかったんだという思いでいっぱいで、そんなことを考える余裕なんてなかった。


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今まさに「仕事が辛い人」「メンタルヘルスで退職した方」には参考になるお話ではないかと思います! また、メンタルヘルスではないけれど、会社の同僚や部下を持つ管理職の方そして障がい者雇用の定着支援を行う人事の方などにも参考になる情報があるかもしれません! ★アピールポイント★ 私は「中央公論」という歴史と威厳のある(お堅い汗)雑誌の読者コラムに採用され雑誌に掲載された経験があります。このマガジンの文章はもともと「出版用」に執筆したコラムであり何社かに原稿を送りあと少しで出版まで話が進んだ内容です!

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