【うつ闘病記】地宙人、家を買う - 00_地宙人、現る
二○一六年、春。
「あなたには、発達障害がありますね」
ボクの担当医が、こう診断を告げた。正に寝耳に水である。
「はぁ……それは直るものなのでしょうか?」
「いいえ、これはあなたの個性ともいえるもので直ることはありません。この個性があなたの属する社会と不適合を起こしているため、生きづらさを感じてしまい、二次障害としてうつ病を発症したわけですね」
目から鱗である。先生の話を聞くと、発達障害といってもいろいろ種類があり、私は「注意欠如・多動症(AD/HD)」が優位なタイプであるらしい。今まで人生で、いくら努力しても起こしてしまった数多の失敗は、このAD/HDが原因であった可能性があるのだという。それだけではない。人とコミュニケーションをとるのが苦手、つまり人との距離感をうまく取るのが苦手で場違いな発言をしてしまったり、突拍子も無い行動を取ってしまったりして、いつも孤立してきたのも、つまりは今までの人生で感じてきた「生きづらさ」の原因はこのAD/HDのせいかもしれないというのだ。
ここで疑問が生じる。
「では、私の人生……つまりその病気は、なすすべ無しというわけですか?」
「いえいえ、今は症状を改善する薬もありますし、認知行動療法やマインドフルネスといった考え方のクセを改善する治療があります。また、個性から発生する苦手を意識して、行動のクセを改善する治療もあります。それに、自分らしく生きるために仕事やプライベートの生活を見直す必要があるかもしれませんね」
後に知ったことだが、程度の違いこそあれ、こういった発達障害の傾向のある人は二○人に一人はいるという報告もあるらしい。彼らは、自分の人生に生きづらさを感じて日々自尊心を失いながら辛い人生を強られているらしく、ボクと同じように、結果としてうつ病のような精神疾患を発症してしまうケースが多いということだ。
なるほど。ボクらはこの地球に住みながらにして、周りからは浮いた存在として疎まれて宙吊り状態になり、それでも足をバタつかせて汗かき一生懸命生きている。普通の地球人に対して、言わば『地宙人』ということになるのかもしれない。
驚くべきことに、いや当然か、ボクらは普通の地球人と、影も形もちっとも違わないのである。
あなたの知り合いのちょっと変わったあの人、今隣にいる知らないおじさん、もしかしたらあの人気タレントも地宙人であるかもしれない。
何はともあれ、ボクらは日々生きづらさを感じながらも、ふつうの生活を続けている。
この文章はそんなちょっと「ふつう」でない「地宙人」であるボクの、極めてふつうの生活のある一ページを切りとった「メモワール(回想録)」である。
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