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「ゲームボーイ」と「月光仮面」

ある日、ふと次男が聞きました。

「今までで、お父さんが一番面白いと思ったゲームは何?」

ふむふむ、一番面白かったゲームかぁ。そりゃあ今君とやっている「フォートナイト」に決まっているじゃないか!いやいや、大学生の時にやり込みすぎて大学に出席できなくなった「ウルティマ・オンライン」かな?

まてよ?私は少し考えた後「SaGa(サガ)かなぁ」と答えました。

「SaGa(サガ)」というのは、私が中学生のとき「ゲームボーイ」というゲーム機で発売されたゲームです。「ゲームボーイ」は持ち運びできる初期型のゲーム機です。画面も白黒、絵もドットで荒く、音楽も単調でしたが、当時寮で暮らしていた私にとっては唯一利用可能なゲーム機でした。(本当は持ち込み禁止でした)

「SaGa」はそんな「ゲームボーイ」の最高傑作の一つです。なにせストーリーが壮大です。主人公のいる世界は塔で成り立っており、その塔の頂上には楽園があるという設定です。しかし、主人公達が辛く長い冒険の末に頂上にたどり着くと、そこには「神」が待っているのです。

「神」がおっしゃるには「小さな人間(主人公達)が必死にもがき苦しみ、生き抜く姿は感動した、なんでも褒美を取らそう」とのことです。しかし弄ばれた主人公は怒りが収まらず最終的には「神」と戦うことになります。荘厳な音楽が流れ、「神」との戦いが始まります。あの時の感動は、すでに中年となった私にはもう思い出すことすらできないほどです。

私は息子達を集め、「よしよし、お父さんがハマった最高のゲーム見せてやろうと」とYouTubeで「SaGa」を検索してみました。するとそこには「神」と戦う主人公達の勇姿が記録されていたのです。あの荘厳な音楽が、あの東洋神を模した妖しい神の姿が…あれ?

そこには白黒のドットで描かれた、画面のシミのようなもの写っていました。荘厳に思えた音楽は、今聞くとリズミカルではありますが非常に単調なメロディでした。

期待しながらYouTubeを覗いていた息子達の目もだんだん曇って来ました。

そしてついに「お父さん。これのどこが面白いの?」三男がボソッと呟きました。

私は悲しくなりました。そしてある出来事を思い出しました。

父が中学生の私をつかまえて「月光仮面」を見せてくれた時のことです。

「これは面白いんだ、お父さんが小さい頃はみんなこれでドキドキしていたんだ!」と父は嬉しそうに月光仮面のビデオテープを私に見せてくれました。

そこにはただちに職務質問をされるレベルの怪しい包帯を巻いた男がいました。この怪しい男はヘルメットも付けずにバイクにまたがり、悪の組織の車を追いかけていました。悪の組織はなぜか強力なマシンガン(ドラムガン)をもっており、これを彼にむかってバリバリと撃つのですが、なぜか彼には弾一発も当たりません。逆に彼が狙いもつけずに放った腰撃ちリボルバーは当然全弾命中で、敵はバタバタと倒れていきます。

そして極め付けは、事件が解決すると誰もが「月光仮面は誰なんだ!?」と叫びまくります。さっきまでそこにいたはずの探偵のことは全て忘れて!!

あまりにシュールなそのエンディングをみて、当時の私は頭の中でずっと夢野久作の「ドグラマグラ」を思い出していました。

そして私も口にしたのです「これのどこが面白いの?」と。


お父さん悪かった。

面白かったんだね!「月光仮面」!!




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