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58冊目*旅のラゴス(筒井康隆)
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
我々はどこから来て、どこへいくのだろう
筒井康隆氏の小説は、初めてだ。
ギラついて、近寄りがたいと毛嫌いしていた。
つい最近、子どもに食わず嫌いはやめなさい、と叱った。現在の道徳に反すること以外は、妄想や噂話だけで判断せずに五感で味わって欲しいと願ってのことだ。どの口が言ったかな?自問自答を繰り返し、本書を開いたのだった。
驚いた。
数行読んだだけで、異世界へ飛ばされたのだ。
砂漠の知識が乏しいので、私の視界に広がるのは、平山郁夫の世界だ。主人公・ラゴスと共に旅をする。目的地がどこなのか、ただ南というだけ。
不安と期待が入り混じる感覚は久しい。
どうした訳か、ここ数年間、自分の心をざわつかせるような物語を避けるようになってきた。よく考えるとコロナ禍に突入した頃からかもしれない。世間が騒々しく翻弄されていくのに辟易していたからかもしれない。見るもの触れるもの、とにかく淡々としたものを受け入れていきたかった。
久しい感覚と、ロゴスの揺るがない目的への強さの均衡が程よいものだったのかもしれない。本を閉じた後もなお、ロゴスは旅を続けるらしい。
どこへいくのか、終焉か。
人生は旅だというけれど、本当に終わりがあるのだろうか。裏表紙を眺めながら唸り声をあげてしまった。
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