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45冊目*おいしい旅 想い出編 (角川文庫)(秋川 滝美 他6名)

昔住んでいた街、友人と出かけた思い出の土地、子どもの頃の懐かしい旅の記憶……。大切な思い出と記憶を巡る旅を描いた7作品を収録。魅力あふれる旅先と、その土地ならではの美味しいものがたっぷり詰まった、実力派作家7名による書き下ろしアンソロジー

Amazon より

五感を刺激するのは、どの思い出だろう
もう一度、足を運んでみようかな。

生まれは東京だが、概ね千葉県で過ごしてきた。
鹿児島生まれの父と東京生まれの母。

千葉県には縁もゆかりもない。
父は当時、腕一本で仕事をしていたので、昨今話題だったリモート移住みたいなことをしたのだろうか?それなら時代を先取りしすぎだ!!

よくわからぬまま千葉で生きてきて、結婚後も夫が千葉を気に入り、ありがたいことに私は県外から出ないままである。

出ないが、観光地としてあまり注目をしてこなかった。幼少期、家族でいくつか訪れた記憶はあるが根からのインドア少女にとって海は恐ろしいところだし、山は見るものだった。

なので千葉県の観光地を観光地として認識しながら訪れたのは、子供ができてからの話である。

千葉県には、いくつか冒険心満載のラーメンが存在する。これから話すことは、私個人の意見であるし、そもそもラーメンは、普通の醤油味の中華麺が好みでみんなが言うから食べようか?くらいのレベルの人間なのだ。

ここまで布石を置いたのは、これからそれを受け入れられなかった話をするからだ。

おいしい旅という本を読んでいるのだから、おいしいものを話せばいいだろう。数え切れないくらいおいしいものはあった。だが、これはどうしたって我が夫婦にとって色褪せない思い出なのだ。

私に反してラーメン好きの夫が、是非とも食べたいと探し出したその店は、昼時になると行列になり、また遠くからそれを求めてやってくるという知る人ぞ知る店だそうだ。

ちなみに弟の友人は、「これが本来のラーメンだ!」と豪語するくらい地元に愛されるラーメンらしい。

夫の連れて行ってくれる店は、だいたい当たりだ。信用していた。メニューは、確かスタンダードのもの、それにチャーシューが数枚多く入るものといたってシンプルなものだった。

注文をし、ワクワクしながら待つ。
出てきたラーメンは黒かった。

真っ黒なスープを一口飲んで、疑問符が浮かんだ。もう一度飲んでみたが増えるばかりの疑問符。

ラーメンを啜る。荒みじんの玉ねぎを食べる。
「玉ねぎがオアシスだ」と訳のわからない言葉が出てきて呟く。食べる、残すのはポリシーではない。が、進まない。

数分後、身震い。
「ああ、ダメだ…」

うめき声が出てしまった。
後にも先にも、そんな感想を言う人初めて聞いた。と夫はその話題が出るたびに大笑いしてくれる。私も笑う。途端に広がる「湯醬油の独特の香り」あれはなんだったのか?

極々稀に私は、ありえないハズレをひいてしまうことがある。出汁を入れ忘れられたり、何かが足りなかったり、入ってはいけないものがあったり…それだったのだろうか??

前出の弟も共通して笑いながら話すのでおそらく、私が食べたものは、そのラーメンとしては正解らしい。

滑らかに出てくる思い出たち。
こう言う「食と旅」の話もあるんだよな、と思いつつ私の思い出をまた辿ってみたいと思った一冊。ぜひ、この夏休み旅のお供にどうぞ!

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