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12日目*朝は穏やかに過ごしたい。
「恩返しをしてるんだ」
朝食時、配膳をしながら片耳で聞いていた親子喧嘩。喧嘩というよりも、父が娘に対して拗ねている言葉を羅列している。
夫曰く、俺のいうことだけは聞いてくれない。いつもママばかり優遇されている感覚、なんだとか。似たようなもんだけどな…。ここがで反論するとややこしい。
そういう時、私は火の粉が飛んでこないように目の前の業務をこなす。やんわり無視がいいと思っている。
どちらの味方にもなれないのだ。
お互いの気持ちがわかるし、誰のせいでもない。私のいうことを聞いてる風に見えるのは、私の雷が怖いからにすぎない…。
真実を見逃していますよ?でも黙って聞いておく。何を言っても悲劇モードに入ってる彼には響いてくれない。最悪、悪い空気のまま一日を過ごさなければならなくなる、それだけはごめんだ。
さて、やんわり無視を決め込んで、キッチンとリビングを行ったり来たりしていた私。「おおう」という夫の感嘆と寂しそうな声に、娘がなにかいけない言葉を投げたのではないかと妄想した。
私をチラリと見る視線、やけに引っかかる。どうしたのかと問うても答えない。怒りの導火線に火がついた。
余談だが、私は身内への怒りだけ沸点が低い。他人だと中身は同じように感情のスウィッチが怒りへとすぐに切り替わってしまうが、見せない術を持ち合わせてる。単純なのですぐにおさまるけど。
で、まあ苛立ちが勝って威嚇声を出す。
「なんでもない」いや、もうその態度はなんでもなくねーだろ!!!!!
数回聞いても教えてくれないので、食事をスタートさせた。数分間、無言で食べてる私に向かい、夫は冒頭のセリフを言う。
「ママに恩返しをしてるんだって」
は!?
あまりにも突然すぎて、聞き返す。
すると娘の対応が父と母とで違うのは、ちゃんとお世話をしてくれた(と見えている)母への恩返しだと言うのだ。
思わず、恩返しをすると言うことはどこかに行っちゃうのか?と問う。何を聞いてるんだ私。
つい、恩返しといえば鶴だったり、亀だったりを連想してしまったのだ。だって彼らどっかにいっちゃうじゃん!!!!!
なんだこの子、人生何回目なんだ?
いやたぶん「怒ると怖いから」と言う秘めた思いを隠して、喜びそうな言葉を出したのかもしれない。それにしたって選択する言葉はそれなのか…。
夫と同じような「おおう」と言う声が漏れた。なんともいえない気持ちが溢れて、食卓が華やいだ。夫のは複雑な表情をしていたが、それもやっぱりきちんと関わっている証拠だと私は思うのだ。
だって本心をきちんと、怖がらずに言葉にできると言うことは信頼しているからだ。これは自信を持って言える。
そういうと、彼も安心した顔を少しした。
やっぱり朝は穏やかに過ごしたいもんだ。言葉がけ一つでその空気はガラッと変わる。朝ごはんが美味しい!これだけで、良い一日を迎えられると確信できるんだ。
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