71冊目【本のはなし】今日はなんの絵本を読もっか?
「今日はなんの絵本を読もっか?」
娘と布団に入る準備をしつつ声をかける。
彼女が赤ちゃんの頃から、絵本は欠かさず読んでいた。
娘が少し大きくなると、絵本の量は日に日に増えて、多い時には、10冊程度になることもあった。一瞬で読み終わる本もあれば、なかなか読み応えのあるものもあった。
娘と体をくっつけて読む。
絵を見ながら指さしたり、文字を読んでいてもストーリー関係なく元に戻ったり、飛ばしたり、彼女独特のルールで行われる絵本時間。彼女の熱すぎる体温を感じながら、少しだけタイムスリップ。
幼少期。
やっぱり私は、両親に読み聞かせをしてもらっていた。時間は眠る少し前の時間。父もしくは母、どちらかが真ん中で両端に私と弟。全員うつ伏せになって絵本をのぞき見る。
ストーリーなんて、関係なくてああでもない、こうでもないと勝手な物語を展開していく。
それは、いつの間にやらなくなってしまった。と思ったらある日、復活した。父がぜひ君たちに読んでもらいたい本があるという。
椋鳩十。
「大造じいさんとがん」の作家。たしか私の国語の教科書に載っていた記憶がある。教科書の本読みが、毎日の宿題で、両親に聞いてもらっていたのだ。それでだったのか…よくわからないが、父は椋鳩十全集を購入していたのだ。
余談だが、父はいい声だ。
サザンオールスターズの「いとしのエリー」をカラオケで歌ったのを聞いて、はじめて「いい声なんだ」と気づいた。それ以来、父の声を心の中で絶賛している。
そのいい声で椋鳩十を聞かせてもらった。飽き性な父なので、習慣にならずに終わってしまったのか…私たち兄弟側から断ったのか、記憶があやふやだが、なくなってしまった。
読むといいよと勧められたが、どうにもこうにも私は鳥嫌いなもんでね、なんて言って興味を示さなかった。その本はまだ父のベッドの下にあって、たまに孫娘に読み聞かせているようだ。いい声は健在だ。
さて、我が家でもつい2、3年前に「もう、そういう年ではないから…」と読み聞かせを断られた。小学校中学年、もうそんな時期になったのかと寂しさと成長への喜びとともに、読み聞かせを卒業した。絵本は本棚にしまったまま長い眠りについていた。
国際社会を目指す!なら、母語だよ。
話は変わって。
娘は来年、中学年になる。娘は、グレーゾーンと診断を受けた小学3年生から、支援級に在籍をしている。知的レベルが実年齢よりも2,3才幼いとのこと、視覚優位なので聴覚のみの指導では、理解に乏しくなってしまうと数値で示されている。
国語と算数は、支援級で行い、そのほかの教科は一般級の子と一緒に授業を受けている。理解のスピードが遅いだけで、日常生活は、なんとか問題なさそうにやっている。
ただ、高校受験のこともあり、中学生では一般級へ進学することに決めている。中学は一気に勉強内容もさることながら様々な課題が難しくなる。内申点というのもついて回る。
そういうことを考えると、少しでも対策をとっておいた方がいいかもしれない。私は、彼女を口説き落としにかかった。
「オンラインで英語を習わないか?」
英語の先生は、赤ちゃんのころから「育児えいご」でお世話になっていた女性。アメリカの大学を卒業後、そのまま本土で勤めていた経歴の方だ。911の影響で日本に帰国。その後、子どもたちに英語を教えている。先輩ママでもある。
たまたま、彼女のFacebookを見て、私は動かなければと思ったのだ。その記事は、支援級に在籍していた子の中学事情のことだった。
娘を口説き落とし、今秋からお世話になっている。幼少期の基盤は、ちゃんとあったので楽しそうに授業を受けている。
その英語講座には宿題が出る。
その一つが、絵本の読み聞かせ。英語を学ぶならば、母語もきちんとしよう!というのが、先生の考えだ。もっと細かく説明されたけれど、授業内容の拡散はNGなので割愛。
私もそれには大いに賛同だ。
思わぬところで絵本の読み聞かせが復活した。まだ読んでいない本がたくさんあるのだ。
まずは、何から読もう。読んでいないものはないか?たくさんの選択肢の中から読み聞かせしたいものを選ぶのは至難の業だ。
その教科書の一冊としてこんな本を見つけた。
「季節を五感で感じる 笑顔あふれる学級づくりに役立つ読み聞かせ絵本: 四季折々に読みたい 子どもたちに人気の絵本75冊」(なかたにゆか)
著者は、学校の先生だ。授業で、絵本の読み聞かせを取り入れているそうだ。何冊か出版されているなかで、一番に惹かれたこちらの本。
この日本に生まれたのだから季節を感じてほしい。その思いが一番に強かった。実母に教わった季節感を私は、丁寧にしてこなかった。
異常気象で季節の感覚が変わりつつあるけれど、絵本を通して、季節を母娘でじっくりと味わいたい。
今は冬だ。
この本をたよりに、冬の絵本を探しに、図書館に出かけてこよう。まだ、もう少しだけ娘の温もりを感じられる時間が増えた。
「さて、今日はなんの絵本を読もっか?」