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55冊目*宙ごはん(町田そのこ)
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
ごはんは、いつでもあなたの味方。
一人の少女の成長物語。
と思いきや、その少女を通して周りの大人が再生していく話だ。
日々を過ごせば喜怒哀楽、忙しい。
その最中でも「ごはん」については、食べなくてもそこに存在するものだと改めて思う。
朝、起きられずに遅刻寸前の間際に「ご飯を食べろ」と声をかけられて喧嘩をふっかけ、それでも手軽に食べられるようにと持たせてくれたことを思い出しつつ、私も子どもにそうやっている。
もうすぐ太ったから食べないとはじまるのかもしれない…。様々なダイエットをしてきた先輩としてそれだけはやめるように伝えていこう。
たくさんの「ごはん」の場面が描かれている作品を読んでいると、これまで生きてきた「食卓」が思い出される。
もちろん適当でいっかーという雑なご飯の時もあるし、食べなかった時もある。全てではないけれど、その時の景色や感情も滲み出しては、懐かしむ。
少女・宙ちゃんもきっとそうだろう。
年相応の感情が膨れ上がって、それをご飯と共に飲み込んで消化する。
発育に必要なのは、栄養だけではない。
その時の雰囲気も大事なのだ。
常々考えていることがある。こども食堂をやること自体は素晴らしい。しかし、それを推奨する国については思うことばかりだ。そもそも家族と一緒に、華美でなくてもきちんと食べられないのはいかがなものか?
時々、お友達やご近所のみんなと食べられるという特別であってほしい。それがこども食堂のあるべき姿なのではないかとわたしは強く思っている。
「ごはん」は生きることだ。
この国を、この世界を変えること、「ごはん」を考えていたら壮大なテーマへと変貌を遂げてしまった。なんせこの一家をとりまく全ての人の人生がこの物語には詰まっているからだ。
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