【地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島 中種子町地域おこし協力隊OG 湯目由華 】
『地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島』(以下:サポーターズ)について知ってもらうにあたり、昨年度はメンバーや活動紹介を毎月行ってきました。今年度からは現役の地域おこし協力隊(以下:協力隊)やOBOGの皆さんの背景にも迫っていきたいと思います。
第15弾の記事はこちら。
今回は中種子町地域おこし協力隊OGで地域デザイナーとして人材育成・伴走支援、総合的な探求の外部講師など、多岐に亘り活動されている湯目由華さんの想い(第1〜3章)について紹介していきます。
好きな場所を元気にできる仕組みづくりを
湯目:私は岩手県にある小さなまちの出身なのですが、小学校時代から遊び場だった商店街がシャッター街になっていく光景を目の当たりにしてきました。
仕事がない、若い人は出ていき、高齢者は増えていく…。周りの大人からは「安定した公務員になりなさい」と言われて育ちました。
ずっとそこに違和感を感じていて「好きな場所を興せる人になりたい」「好きな場所で悲しい想いをする人を減らしたい」といった気持ちが強くなって、それが地域づくりに興味を持った原点になったんです。
そこから突き詰めていった結果、地域が抱えている課題に効く特効薬となれるような仕組みづくりができる人になって、それを活用し、地域がどんどん元気になっていくようになってほしい。そう思うようになりました。
湯目:大学卒業後は経営コンサルを経て、2020年4月に中種子町の協力隊として夫婦揃って移住することになります。
実際に地域へ入って、自分の想いをカタチにしたいと思った時に、たまたま協力隊の制度を知り、中種子町で募集しているのを発見したんです。
ちょうど、南国で、かつ、離島に絞って調べていたのでタイミング的なところも大きかったと思います。
着任当初は新型コロナウイルスが世界中に蔓延し始めて、人との交流や外部との接触が制限された時期でした。さらに、それまで当たり前だったことができなくなり、機能しなくなってしまって…。
そんな時だからこそ、できることがあるのではと思い、高校生や地域の皆さんのサポートをいただきながら活動を展開していきました。
お互い頼れる関係性だからこそ
湯目:力を入れたことの1つに地元の高校生と一緒に始めたプロジェクトがあります。例えば、総合的な探求という授業の一環でSDGsについて学びました。
そこで、身近なところで持続可能な取り組みができないか考え、貧困と教育の問題に焦点を当て、さらにそこから制服のおさがりについて注目したんです。
実際、種子島はJAXA関係や短期留学等、転校してくる子どもたちが少なくないです。そのような人たちは地域との関わりが少ないためおさがりをもらうことは困難で、高額な制服を揃えなければならないことになります。
高校生と対話を重ね、おさがり文化をつなぐアプリ“osagari”を開発しました。他のプロジェクトもですが、コロナ渦だったからこそ、皆必死に考え、地域と繋がり、まちに対する愛着が強まったと思います。
湯目:移住当初、まちで聞き込みをしていると、島に残っている若者がチャレンジしづらい環境だったことを知りました。
それで、高校生の「やりたい」を実現するサポートのポジジョンでプロジェクトを進めていきました。
実際に、駄菓子屋さんや動画作成、町内の飲食店を巻き込んだテイクアウト市を開催するなど、私自身も楽しめることに関わらせてもらったと思います。
様々なプロジェクトを進めていく上で、私が大事にしていることが3つあって。
まずは人の悪口を言わない。次に常に楽しむ。そして、一人で抱えずできないことは頼る、です。
移住前までは頼るのが苦手だったのですが、高校生や地域の皆さんとのコミュニケーションを通して「頼っていいんだ」と思えましたし、より柔らかいコミュニケーションができるようになりました。
童心を忘れず、楽しむ
湯目:ありがたいことに「協力隊としての3年間の経験で活かせないものは何一つない」と思えて任期を終えることができました。実際、失敗したことも苦労したこともたくさんあります。
でも、再度ゼロから考え直し組み立ていく中で、支えてくれる人たちがたくさんいました。だからこそ、物事をポシティブに捉えるメンタルを培うことができたのではないかと思います。
私は何かしら取り組んでいる時、童心を忘れずに楽しむ姿勢をずっと大事にしています。子どもの時の気持ちを何歳になっても忘れないでいよう。それが私の人生のテーマなんです。
高校生と関わることも多いので、最近流行っているものも教えてもらうのですが、私が子どもたち以上にハマってしまうこともあって(笑)。それだけ、今を楽しいと思えるっていいなと感じています。
湯目:最近は“よろず支援”で経営相談だったり、サポーターズと連携し協力隊の“やりたい”を実現するための場づくりだったりと3年間の延長線上の形として活動を続けさせてもらっています。
私は空気を読まないところがあるのですが、むしろ、それを武器に変え、様々な物事において壁を越えることで現役の協力隊のサポートをしています。
皆さんの悩みを一緒に言語化して方向性を定め、サポートできる人に繋ぐ。今後もそれを続けていくつもりです。
今、年に2回『たねがしまスープ』(※2)という取り組みを行っているのですが、それを種子島の文化に合わせながら、協力隊を対象とした場を展開できないかなと模索しています。
その先に、どの世代も、どんな人もまちに対する愛着やプライドが生まれて、そこから自己肯定感も高まり、住みやすい場所になれたら。一人でもそう思ってもらえるように、これからも活動を続けていこうと思います。
(終わり)