尾米タケル

尾米タケル之一座 作・演出。コントやら。舞台やら。 尾米タケル之一座HP https://okometakeru.jp/ 脚本・演出などお仕事のご相談はこちらまで→okometakeru@yahoo.co.jp

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』 終「ミヤタさん」

終幕   雨の音。 照明徐々につく。 ビルの屋上。 傘をさし立っているミヤタ。 下手奥よりカッパ姿の男(ムラカミ)。   ミヤタ ……。(男の気配に気付く) ムラカミ よく、来てくれたな。 ミヤタ ……。 ムラカミ 久しぶりだな。ミヤタ君。 ミヤタ ……本当にあなただったんですね。メールがきた時は特対の連中の罠かと思いましたよ。 ムラカミ 局をやめたらしいな。 ミヤタ あんなことをしでかした男と行動を共にしていたんだ。もうファームへ戻る道は絶たれてしまい

    • 戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑬ テロ

      テロ  農務局特別対策室、オオハラの部屋。 ミヤタ・オオハラ向かい合って立っている。   オオハラ いや、お疲れだったね、ミヤタ君。 ミヤタ いえ、帰りが少し遅くなりまして。申し訳ありませんでした。 オオハラ 何を言っている。あんな事件があったんだ。それは仕方がないよ。 ミヤタ はぁ。 オオハラ いやでも本当にお疲れ様。カドタ君も無事に戻って良かった。今度のあの研究所での一件も、実験中の不幸な事故ということで片がつきそうだ。 ミヤタ ……あの、事故ということに

      • 戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑫ 悲劇

         悲劇 研究所前広場。 朝礼の立ち位置。 ミヤタ・ムラカミの足元には荷物。   ゴトウダ え~、みなさん、昨日ご紹介したミヤタさんとムラカミさんですが、え~、今日、ファームを去られることになってしまいました。 研対1 え、もう帰るの? 研対2 もう帰るって。 研対3 ……。 研対4 ムラカミさん。 研対2 ミヤタさん。 ゴトウダ あ、一言。お願いします。 ミヤタ あの……。言いたいことがあり過ぎて……うまく言葉では伝えることができませんが……。 ミヤタ

        • 戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑪ 「助けて」 

          「助けて」 暗転中。 カドタとミヤタの電話の音声。 この間に研究所ロビーに場面転換。   カドタ ねぇ、ちょっと聞いてんのあんた? ミヤタ 聞いてるよ。 カドタ で、どうなのよ、女できたの? ミヤタ うるさいなぁ、まだだよ。 カドタ まだって何よまだって。あんたホントダメねぇ。 ミヤタ は? カドタ あんたね、ただ生きてたらその内自然に女できるとでも思ってんじゃないの? ミヤタ そんなこと思ってないよ。 カドタ だってまだってそういうことでしょ?いつか

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑩ 人間

          人間 ベジタブルマンの厩舎。 上手からそれぞれ仕切られた空間に、研対1、一つ空けて研対3、研対4座っている。 ミヤタ、正面を向いて座っている。 以下はミヤタがそれぞれの研対と個別に会話したものの抜粋。   研対1 僕は文字を書いてしまったのでこの施設に入ることになりました。 ミヤタ 文字?文字を書くのがなぜいけないことなの? 研対1 文字は危険だからです。 ミヤタ 危険?隣の厩舎の子は昼間歌は危険って言ってたけど。 研対1 はい。彼女は歌をうたってこの施設に

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑩ 人間

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑨ 幸せ

          幸せ  研対2のハミングが聞こえてくる。 ゆっくりと明かりがつく。 夕方。 研対2、舞台下手よりに座っている。 上手からミヤタ。 研対2、ミヤタに気付いて、   研対2 あ、あの、今のはここで教わった歌で……。 ミヤタ あ、いいんだいいんだ……あの、ごめんね何か邪魔ばっかりしちゃって。 研対2 いえ、邪魔だなんてそんな……。 ミヤタ 厩舎を探してたら、君が見えたから。 研対2 厩舎をですか? ミヤタ うん。 研対2 厩舎なら(下手を指し)こっちにまっ

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑨ 幸せ

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑧ 向けられた疑惑

          向けられた疑惑   第十二研究所ゲストルーム。   布団に座り、ミヤタの携帯のメールを読むムラカミ。 ムラカミ ベジタブルマンたちが意思を持ち始めているかもしれない――か。   ムラカミ、ミヤタに携帯を差し出す。   ミヤタ あの、ムラカミさん本当に大丈夫なんですか? ムラカミ ん?何が? ミヤタ いや、熱が……。 ムラカミ ああ、ウソだよウソ。ここに泊まって何か手がかりがないか調べたかったんでな。 ミヤタ はぁ~、やっぱりウソだったんですか? ムラカミ 気付

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑧ 向けられた疑惑

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦ 意志

          意志 電話の呼び出し音。 農務局特別対策室の室長室。 下手から電話を耳に当てたオオハラ登場。 以下、オオハラ、電話をしながらサプリメントで昼食をとる。   オオハラ 出ないな。   一方研究所の外、 上手からミヤタが出てくる。   ミヤタ はいはいはいはいはいはい(電話に出て)もしもし。 オオハラ いやぁミヤタ君、どうだいそっちは? ミヤタ どうもこうもありませんよ室長!今日一日でいろんなことがあり過ぎて頭がついていきませんよ。 オオハラ カドタ君のこ

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦ 意志

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件

          事件   第十二研究所ロビー。 ゴトウダ・ザイゼン、カレーを食べている。 テーブルに座っているミヤタ。 窓の外を見ているムラカミ。 看守はエプロン姿で立っている。 広場ではベジタブルマンたちが石を拾う等している。   ゴトウダ、カレーをたいらげ、 ゴトウダ あ~、食った! 看守 おかわり、たくさんありますんで、言ってくださいね。 ミヤタ ……あの、さっきまでバーベキューしてたんですよね? ゴトウダ ええ。バーベキューのシメはやっぱりカレーでしょ? ミヤタ 

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑤ 警報

          警報   鳥の声など。 上手から研対2・ミヤタ・ムラカミがやってくる。   ムラカミ あー、疲れた!だから遠回りだっていったじゃねーか。 ミヤタ 文句が多いですよムラカミさん。 研対2 すいません。みんなもこっちに向かってると思うんで。 ミヤタ え? ムラカミ あち~! 研対2、下手の方にベジタブルマンたちを見つけ、 研対2 あ!いました!おーい! ムラカミ やっと歩かないですむのか。お前水持ってねぇか? ミヤタ ありませんよ。   下手から 研対1・3

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑤ 警報

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』④ 研究対象2

          研究対象2   研対2の歌声が聞こえてくると明転。 地べたに座って歌っている研対2。 その前に白い杭が立っている。 研対2   〽わたしの全部のそのすべて  どこかの誰かのためのもの    わたしを食べるそのひとは  わたしを感じてくれるかな?     わたしを食べるそのときに  わたしを想ってくれるかな?    どこかの誰かは誰だろう   わたしは誰かの何だろう   ミヤタ、遠方に研対2の姿をみとめ、   ミヤタ あ、ムラカミさん、あれ。 ムラカミ ん? ミヤ

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』④ 研究対象2

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』③ 疑心

          疑心   ファーム第十二研究所の敷地内、建物からは離れた場所、 ミヤタ、一人で座っている。 ムラカミ、フランクフルトの載った紙皿を持って上手からやってくる。   ムラカミ こんなところにいたのか。 ミヤタ すいません。ちょっと旅の疲れが出ちゃいました。 ムラカミ そうか。   ムラカミ、腰を下ろしてフランクフルトを食べる。   ムラカミ うん、うめぇ。 ミヤタ ……。 ムラカミのフランクフルトをじっと見るミヤタ。 ムラカミ ブタだよ。ブタのソーセージ。

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』③ 疑心

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』② 研究対象

          研究対象   第十二研究所前の広場。 下手側に研究対象のベジタブルマンたち、上手側にゴトウダ・ザイゼン・クボ・看守・ミヤタ・ムラカミが並んでいる。 ベジタブルマンたちは看守と同様、皆全身みどり色の衣装を身にまとい、頭頂部からは植物が突き出ている。   ゴトウダ おはようございます。 ベジタブルマン一同 おはようございます! ゴトウダ 今日はまずみなさんに紹介しておきたい人たちがいます。農務局からいらっしゃった、ムラカミさんとミヤタさんです。   ベジタブルマンたち

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』② 研究対象

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』① ファーム第十二研究所

          のつづき ファーム第十二研究所 ファーム第十二研究所ロビー。 舞台上、下手側に応接セット。 以下、客席からは見えないが、下手袖に出入り口に通じる廊下。 上手袖に事務所・トイレ・給湯室など。 二階に研究室・宿直室・ゲストルーム。 舞台前方、客席側は一面の大きな窓。 窓の外は広場になっている。 舞台奥、上手の袖に階段があるという設定。 下手から荷物を手にした看守に案内されミヤタ・ムラカミが入ってくる。 看守、衣服はすべて緑色で、頭頂部から植物が生えている。

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』① ファーム第十二研究所

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』序 失踪

          序 失踪 音楽。 明かりがつくとそこは都内にある古いビル4Fの一室。 エリートの集う農務局内で出世コースからはずれた者が島流しにされる”別室”と呼ばれる場所である。 舞台下手側に応接セット。 舞台前方客席側には大きな窓があるという設定。 舞台上には二人の男が立っている。 数刻前、突如ここを訪れた農務局特別対策室室長のオオハラと、別室に勤務する局員のミヤタ。 ミヤタ カドタ。カドタマリですか? オオハラ 君、同期だったよね。ミヤタ君。 ミヤタ はい。 オオ

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』序 失踪

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』背景・あらすじ・登場人物

          【背景】 今は未来。 人類の生への渇望に後押しされ、その歩みを止めることなく進化し続けてきたバイオテクノロジーはついに、人間に臓器・血液・肉、その他あらゆる部位・器官を提供するための人型生物“ベジタブル・マン”を創り出した。 「限りなく人間に近い植物」と定義される彼らはドナーとして、食料として人類に多大なる恩恵をもたらし、今や人間社会にとって「なくてはならない」そして「あることが当然」の存在となっていた。 しかし、政府指定特別生産区域、通称“ファーム”の中で、彼らがどの

          戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』背景・あらすじ・登場人物