心のこもった生き方をする
大学時代の後輩が、2年をかけて日本を一周した。しかも、1741あるすべての市区町村で、写真を撮ってきたらしい。
彼が撮った写真たちの並ぶ、「1741のふるさと」というタイトルで行われた写真展。彼の撮る写真はいつも、温かくて、誰もが通り過ぎてしまうようなちいさな美しさを逃さない。そんな彼が見てきた日本中は、どんな景色なんだろうとわくわくする気持ちで足を運んだ。
ひとつの市区町村で、いちまいの写真。並んだ写真を見ながら、思い浮かべたのはこれまでに出会った人達だった。
「ああ、あの人が生まれた町はこんなに素敵なところなんだ」
「あの子と旅をしたっけ。懐かしいなあ」
1741枚のうち、私が知っている町や村はほんの少しだった。
でも、私がそうしているように、ここにある一枚一枚が、どこかの誰かの特別な思い出がある写真なんだと思うと、なんて素敵な空間なんだろうと心が温かくなった。
日本に住んでいる人たちみんなが、懐かしい気持ちになったり、青春を思い出して甘酸っぱくなったり、今住んでいるところを見つけて新たな魅力に気が付いたり。その思い出は一人ひとり違うけれど、「心が動く一枚がある」という共通点があって、みんなの人生の欠片がすこしずつ集まっているような気がした。
そんな優しい空間を創れたのは、かつおくんだったからだと思う。
都道府県ごとのエピソードが書かれたパネルには、かつおくんの旅の思い出が少しずつ綴られていた。どの都道府県でも、出会う人たち、見える景色に対する感謝の気持ちや敬意が込められていた。
心で向き合う。ちいさな景色を大切にする。そんなかつおくんは、写真展に来た人たち一人ひとりに対して意識を向けていて、感謝の気持ちを一人ひとりに伝えていた。その姿勢は謙虚で、それでいて芯があってとても素敵だった。
そんなかつおくんから学んだことは、ご縁に感謝をするということ。今ある日常に、隣にいてくれる人に、同じ空間を過ごした相手に感謝をする。
そして、心を込めて日々を生きること。ちょっとした日常に目を向けると、そこにはいままで気が付かなかった幸せがたくさん転がっている。
かつおくんと出会えたことに感謝を込めて。