【一言書評】長嶋有『三の隣は五号室』
長嶋有
『三の隣は五号室』
主人公は賃貸マンションの一室。「(きっと)誰もやっていない」という意味では実験作。作品設定上、群像劇にはしなければいけないが、像が増えすぎてしまうと読者は追い切れない。どうやら事件らしい事件は(起きそうで)起きないらしいことが目に見えているわりに、語りで先へ先へと読ませるには情報量が多い。 ひとつのテーマを媒介しての多人数群像ものでは同じ芥川賞作家の滝口悠生著『死んでいない者』と(淡々と描く語りも)似ているが、後者との違いは「死者の葬儀」がすでに物語(感情)を孕んでいるところか。
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