見出し画像

No.628 心に注すオイルとは?

二人の子ども(長女・長男)が片付き、共にそれぞれのプリンス、プリンセスと県外で家庭を持ち、新たな家族も加わって多忙な生活を営んでいます。
 
残されたのは、「割れ鍋に綴じ蓋」、いや、夫唱婦随ならぬ「婦唱夫随」の我々と、6歳になる三種混合犬(シュナウザー系の顎鬚と、柴犬系の尻尾や手足と、ダックス系の麻呂のようなお顔)のチョコちゃん(カミさんは「すぴぃ」と呼ぶ)でありました。
 
この娘、なかなか「目力」があります。犬にも関わらず、愛くるしい目にものを言わせて、オジサンのハートを鷲掴みにします。「キューン」と鼻を鳴らせ、その鼻先を我が顔に押しつけるまでに近づけてウルトラマン並みに「お散歩連れてって光線」を放出します。瞬き一つしません。そればかりか、片手は、私の膝に乗っけてスキンシップを図ることも忘れません。人間なら、「できる女」の印象です。
 
人と肌が触れあうと、「幸せホルモン」なるオキシトシンが分泌されるといいます。我がオキシトシンは、それこそMAX状態になり、幸せ感が全身を襲ってくるのです。
「よしよし、お散歩に行こうね!」
と椅子から立ち上がると、カミさんの一言が背中を追っかけてきます。
「チョロい父さんだわね。思うツボよ!」
 
江戸時代の伝馬船「ちょき舟」を小型にした速い舟が「ちょろ舟」だそうです。他の舟を負かすほどに素早く動いたから「ちょろい」と呼ばれたのが由来の一つだそうです。
「はい、チョロ男ですが、何か?」
 
以上は、9年前にコラムにつづったものです。そのお嬢チョコも、今や15歳。人間の年齢なら私とほぼ同じ70歳前後のお婆様です。足の運びの衰え、白髪の生え具合はその証ですが、今日も今日とて、時々後ろを振り返りながら互いの様子を確認し「老々介護」のお散歩に出かけます。私は、四季を感じながら心に潤いをもらっています。
 
佐賀藩士・山本常朝によって口述された武士道書『葉隠』に、
「武士道と云ふは、死ぬ事と見つけたり」
とあるようですが、借辞すれば、こう言えそうです。
「老いるとは、心にオイルを注す事と見つけたり」