私は何者か、番外編、a dozen 短歌 5
会いたいと思うこころのほんとうの吃水線の清く冷たく
足裏の緩い窪みよ土踏まず古代の土のことを知らない
一息に吹いて飛ばして砂原をぐるぐる転げてまろびて泣いて
傘畳み礼儀知らぬも襟ただし無礼承知でスキのボタンよ
陽を浴びて珈琲摘みしかの土地に高き山なるひともこころも
風吹いて秋雨前線まるさんかく知っているなら教えてやれよ
抱き合って眠る温みを知る者はそれは獣か真夜の秋風
薄原風深い日の穂の迷い揺れて揺らして揺らされてなお
秋霖を蹴散らす間欠ワイパーのその一瞬の記憶の花びら
深煎りのコーヒー豆のピカピカを抱えて帰る週末の家
歳を得てそれでも歩く普段着のわたしのままのままよまんまよ
誕生日得れば得るほどほんとうのわたしに戻ってゆけるしあわせ