オリーブオイルで揚げ物
エクストラバージンオリーブオイルは、加熱せずに生で使ってくださいって、よく言われますよね。
確かにその通り、エクストラバージンオリーブオイルは、高い香りとさわやかなキレのいい味が身上なので、その特徴を最大に生かすためには、加熱せずにお料理の仕上げにお皿の上で振りかけて使って頂くのが、もっともいい使い方だと思います。
でも、その一方でオリーブオイルは加熱にもとっても強いオイルだということは、実はあまり知られていない事実。
オリーブオイルの本場イタリアでも、レストランでの揚げ物はなぜかオリーブオイルではなくてひまわり油を使うなんてこともあります。オリーブオイル使うことのコスト面を気にするのが一点ですが、「オリーブオイルは揚げ物には向かない」と思っている方がまだたくさんいるからです。
実は、オリーブオイルほど揚げ物に適した油はありません。
まず、さっぱり揚がります。オリーブオイルで揚げた天ぷらは衣がサックサクのパリパリに仕上がり、いくら食べても全く胃もたれしないんです。
天ぷらというと、鍋にたっぷり張ったオイルの中に天ぷら種を放り込んで揚げるイメージですが、オリーブオイルを使うなら、フライパンにヒタヒタに張ったオイルで揚げ焼きの要領で揚げても、サクサクに仕上がります。
そして2番目の特徴は、オイルを繰り返し何度も使えること。
我が家ではてんぷらをするときもオリーブオイルで揚げますが(そもそもオリーブオイル以外の油が我が家にはありません)天ぷらに使ったオイルを捨てることはありません。減った分だけを足して繰り返し何度でも使いますが、毎回サックサクのカッリカリに上がってくれます。
何年か前に、高松市内の料亭を貸し切りにして、オリーブオイルを使った懐石料理のコースを、地元の日本料理の先生にお願いして作ってもらったことがあります。
先付けの酢の物からお刺身、〆のご飯まで、すべてのお料理にオリーブオイルを合わせる企画だったのですが、そのうちのお皿の一つが「オリーブオイルで揚げた天ぷら」
天ぷらがとても美味しく揚がったことはもちろんなんですが、驚くべきは食事が終わった後に厨房で料理を担当してもらった料理長から出たコメント。
「このオイル一体どうなってるの?普通これだけの天ぷらするなら、揚げ油を最低一回、もしかしたら2回取り替えないといけないのに、一回も取り替えないのにカラっと揚がったよ。本当にただのオリーブオイルなの?」
使ったオイルはポリフェノールのたっぷり入った正真正銘のエクストラバージンオリーブオイル。もちろん一切添加物は入っていません。
当日は36人前の天ぷらを揚げる企画でしたが、一度も替えることなくサクサクの天ぷらをオリーブオイルを使って揚げることができたのです。
最高品質のエクストラバージンオリーブオイルはコスト面では段違いに高いオイルなんで天ぷらに使うという発想は出てこないのですが、実は揚げ物に最も向いているオイルでもあります。
では、なぜオリーブオイルがそれほどまでに熱に強いのでしょうか?
オリーブに含まれているポリフェノールであるオレウロペインにはとても強い抗酸化力があり、オリーブオイルが健康に良いと言われる一つの大きな要素ですが、実はオリーブオイル自身の健康にもとてもいいものなのです。その強い抗酸化作用のおかげで、熱を加えても酸化しにくい、すなわち傷みにくいということなのです。オリーブオイルの発煙温度は210℃以上と言われていますが、オレウロペインはその温度帯においても50%程度が成分を保ち続けると言われています。
但し、高品質なエクストラバージンオリーブオイルでも、揚げ物に向かないものもあります。エクストラバージンオイルとは搾ったオイルに何の加工も加えないというのがその定義でしたよね。でも搾りたてのオイルには細かい搾りカスが含まれていてやや濁った状態にあります。それらのカスはオリーブオイルの劣化を早める原因となるため、必ず取り除いてから製品化します。私たちオキオリーブではペーパーフィルターでろ過しますが、イタリアの生産者の中には「non filtato」と言ってペーパーフィルターを使わず、タンクにオイルを貯めて搾りカスを沈殿させて、その上澄みだけを製品化する場合もあります。この方法だとどうしても沈殿しきれなかったカスが残るので、高温に加熱するとそのカスが焦げだしてあっという間に真っ黒に劣化してしまうんです。イタリアでエクストラバージンオリーブオイルは揚げ物に向かないと言われているのはそういうことも理由となっています。
オリーブオイルに対する理解はまだまだ誤解の部分がとっても多くて、何が本当なのかがわからないことだらけ。オキオリーブがやりたいことはただ一つ「オリーブオイルのお手本」をつくること。