ショートピースと秋の空
秋晴れの朝。始発の特急に乗って瀬戸大橋を渡る。
ガラガラの車内から変に晴れやかな外を眺め、祖父の四十九日に向かっていた。
目に痛い光を放つ太陽とそれをギラギラ反射する瀬戸内海。
それは何度も見た景色でありながら、初めて見る光景でもあった。
愛媛に着き、礼服に着替えて。
昼には法要が終わって黒い服の群れが賑やかに歩く。
祖父の家から五分程。子供の頃から何度も歩いた墓地への道。
右手に卒塔婆。合わないヒールのせいで左手を繋いだ祖母に私が引っ張られる形で道を行く。
衣服も気候も、人の姿もすっかり秋の装いのはずが今日は酷く暑い。
「暑い。爺ちゃん晴れ男だわやっぱり」
なんて軽口を叩きつつ、骨を納めて順番に手を合わせる。
周りを高く澄んだみ空色と鮮緑に囲まれ、骨壺の白に黒い服。
灰色の前に置かれたショートピースの紺色と誰かが添えた蜜柑色が鮮やかで。
次の場所へと旅立つ祖父を偲ぶ集まりは、騒がしい声と彩りに溢れた色節になった。
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