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公僕もまた人間である―「現代官僚制の解剖」北村亘(編)

 官僚も所詮、人。しっかり組織人であり、何も特別な存在でもない。労働環境が若干違うだけなのです。

権力の巣窟、中心地である霞が関。その霞が関で行政権力を執行するのが官僚です。

彼らは法律や大臣などの意向や自身の利益拡大などの目的を果たすために、日々仕事に追われています。

本書は完全な学術書です。行政研究を行う学者の方々が日本の官僚制の問題を官僚への意識調査の結果から研究したものです。

・公僕は辛いよ?

 一般の人から見て、官僚はどのような人たちでしょう。

怖い人?

頭の良い人?

いろいろですが、いい印象を持ってない人もいると思います。こないだも財務省でまぁまぁの立場の人が、警察案件になっていました。

 嫌いな人もいるでしょうが、知ってほしいのは彼らが決していい労働環境にいるとは限らないことです。

特に若い国家公務員の中には夜も家に帰れず、夜通し省内で仕事に励む人もいます。

「野党議員の質問対応」
「法案作り」
「行政執行」

官僚の仕事は山積みで、結構ブラック労働とも言われます。その噂(現実)もあってか官僚を志望する学生(特に東大生)は減少傾向にあります。

 労働環境の改善は官僚だけでなく、民間企業においても課題となりました。

民間企業は下手な噂が株価にも影響してしまいます。

だから労働環境はメディアが焦点を当てたことなどもあり、気をつかわれるようになりました。

また民間企業には最悪、労働基準監督署という公的機関がありますから、質の悪い労働環境に関して改善を訴える手段はあります。

 一方の官僚はそうはいきません。彼ら公僕は質の改善という話になりにくいのが現状です。

本書の中には官僚のWLB(Work Life Balance)に関する研究があります。

その章を読むと、やはり民間で労働環境の改善が議論される一方で、公僕にそういう意見があまりないことがわかります。

 官僚の労働環境を変えようという議論がなりにくい理由の一つに、彼らの何が不満かを調査するという機会に恵まれていないというのがあります。

行政改革の一環で行政の範囲を縮小するというものがあります。

行政の範囲が縮小すると官僚のする仕事の範囲も減るので、労働環境の改善になります。

ですが、日本の行政改革は官僚の数を減らして、行政範囲は拡大しているので、仕事は増えてしまい、労働環境が酷くなるのです。

イギリスではこのような現状を変えるべく、首相官邸を中心に毎年、官僚に意識調査を行い環境改善に努めています。

一方の日本は官僚への意識調査をまったくやらないので、官僚は「何を問題と思っているのか」「何をどう変えたらいいのか」という問題が見えないのです。

 選挙で財政拡大について各党が言いたい放題ですが、その分だけ若い官僚の仕事は増加します。

結果、彼らの労働環境がブラックになる可能性があることは忘れてはいけません。

公僕もまた人ですから、夜通し働くのは辛いのです。

 政府権力の強さを理由に闇雲にサービスを増やそうとあらゆる政党が詭弁を弄します。

ですがその影でサービスを支える官僚がいることも忘れないで欲しいです。

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