読書の秋「僕の心臓は右にある 大城文章」
チャンス大城という芸人さんを知ったのは、東京MXテレビ「5時に夢中(ゴジム)」という番組を見た時だ。
地下芸人という紹介のされ方で、短いコーナーをやっていた。
流行りの芸人すらよく知らないわたしは(お笑い系の番組をほぼ見ないため)、名前を聞いたこともなかった。
ゴジムもお笑い番組ではないので、ネタをやるために出ていたのではなかった。
そのせいか、私が持っていたお笑い芸人のイメージ、「笑わせるぞ」という緊張感とか、「いるだけで面白い」という期待感を持たせないのが、逆におもしろく、素朴でやさしげな風貌と共に、ちょっと不思議な印象が残った。
木曜「5時夢(ゴジム)」ファンなわたしは、その後も何度か番組内で、チャンス大城を見ることになる。
そのチャンス大城氏が、本名の大城文章で出した自伝本が、この「ぼくの心臓は右にある」だ。
ゴジムのなかでもちらりと語られていたことがあったが、題名は、ご本人の「先天的な内臓逆位」(臓器の位置が左右逆)から来ている。
尼崎編と東京編に分かれていて、同世代な私にも、懐かし~と思える話題も出てくるのだが、尼崎編は、カタギでない匂いのする過酷なイジメ、今なら「事件」な話も多数出てきて、おののいた。
同時に、小中学校の友達の話には、(ああ、そうだ、あの時代は、子供が多くて、同じクラスでも、いろんな環境の子がいて、なんとなくそれを受け入れてたなあ)と、自分の友達を思い出しもした。
(今は、クラスも人数も少ないので、その雑多感がなくなり、少しの違いでも目立ってしまうような窮屈感がある気がする)
それはさておき、ちょうどよい温湿度、バラエティに富んだエピソード・わかりやすい文章で、一気に読ませる。
クリスチャンである大城家の親子告解の話は笑ったし、中学生の(地域中学)ヤンキー界のスーパースターが、実は知り合いだった話はじーんときた。
東京編には、わたしでも知る有名芸人の名前が多数出てきたので、大城氏は、わたしが想像していたよりもメジャーな世界の住人らしいと思ってみたり。
そして、話は意外な方へも進んでいく。
改めて思ったのは、大きなこと、ちいさなこと、暗い色、明るい色、様々なかけらがあって、そのひとだけの、人生が出来ているのだということ。
わたしにとってチャンス大城は、ゴジムで知って、ゴジムでしか見たことのない(今のところ)、芸人っぽくない芸人さんだったが、この本には、ゴジムだけでは知り得なかった(当たり前)、いろいろあった彼の人生が詰まっている。
英語に、ユニーク(unique)という言葉がある。
日本語で使うと、「ちょっと変わった」とか「おもしろい」というニュアンスになるが、英語では、「唯一の」とか、「他に類のない」という意味なのだそう。
この本の題名は、名実ともにユニークに相応しく、私にとってのチャンス大城のユニーク度も上昇したのは言うまでもない。
2022 とても印象に残った本
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