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メモ小説

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自作の掌編小説まとめ。
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記事一覧

夢は煙とともに

 オリンピックの公式ロゴマークとキャラクターでラッピングされた電車が走っている。  狭く…

岡村直
11か月前
8

分身

 わたしが最初にそれと遭遇したのは、去年の12月10日だった。手帳に書いたから、日付まではっ…

岡村直
2年前
11

二階から目薬

 いつかの時代、パリの街に、芸術家志望の青年がいて、食堂で働く少女がいた。  ふたりは、…

岡村直
2年前
9

無題

 見えるものを見えるままに描くのではなく、自分が見たいと思うものしか描けない。  だから…

岡村直
2年前
5

金曜日の16時、新宿の

 紀伊國屋書店の前で、ヴィヴィアン・ウエストウッドの服を着た年齢不詳の美しい女性とすれ違…

岡村直
2年前
7

ともだち

「世の中には、自分に都合の悪いことを都合よく忘れられる人間と、そうじゃない人間とがいるん…

岡村直
2年前
8

人を喰う男と。

 わたしは人を喰って帰る男を待っている。男は夜7時ごろに帰ることもあれば、日付が変わってからそっとドアを開けることもある。でもわたしはどんなときも男の帰りを待っている。居間兼台所兼ダイニングで、自分ひとりぶんの夕飯を前に。 「先に食べてていいのに」  男はいつも言う。 「いいのいいの」  わたしは向かい側の椅子に座った男に焙じ茶を出し、自分のために作った夕飯を温めなおしてテーブルに置く。きょうはトマトときのこのソースをかけたチキンソテーとわかめスープ、温野菜のサラダと雑穀ごは

桜桃忌の彼女

 白い乳房に、桜桃のような乳首。まるく、つややかで、口に含めば舌がとろけるかと思うほど、…

岡村直
2年前
4

桜の森の思い出

 満開の桜は人を狂わせるのだと教えてくれた男と、夜更けの桜の樹の下ではじめて交わりました…

岡村直
2年前
4

シャネルの5番

 わたしの初恋は、シャネルの5番だった。  文芸サークルの新歓コンパで、空いていた右隣の…

岡村直
3年前
12

ねむことともに

 ねむこ。水木しげるの漫画が好きなきみと、初めてふたりで深大寺へ遊びに行ったのが去年の6…

岡村直
3年前
10

聞いてくれるだろうか。わたしの話を。(「狂わないでね。元気でね。」③)(完結)

 目を覚まし、暗い部屋でベッドに寝転んだまま、枕元のスマホでTwitterを開いた。  内海くん…

岡村直
3年前
10

おれも同じだ。だから、(「狂わないでね。元気でね。」②)

 犬くんが、塾から追い出された。  そのことを、おれは松嶋さんから電話で聞いた。松嶋さん…

岡村直
3年前
9

狂わないでね。元気でね。

 ぼくはぼくの所属していた「塾」から最初に「追放された」生徒だった。もっとも「逃げた」生徒ならすでに何人もいて、ぼく以外の生徒からすればぼくもまたそのひとりにすぎないのかもしれない。  でも「逃げた」ことと「追放された」こととは、まったく違う。とぼくは思う。その違いは重大だ。とも思う。  ぼくを追放したのは「塾」の主宰者、ぼくらの「先生」だったけれど、先生は、逃げた元生徒の全員から軽蔑され嘲笑されていた。たとえば、かつて先生を「博覧強記」と評していた人は、逃げてからは「狭覧弱