「勉強の哲学」の技術士試験的解釈
「勉強の哲学」は立命館大学教授の千葉雅也さんが書いた人文書です。
勉強することについて、フランス現代思想的な文脈で解説されています。
実は、この本を技術士試験的に解釈すると、試験対策にも使えるんです。
「勉強の哲学」の魅力は、深い勉強の方法論について、哲学的に理解することが可能になることです。
ポイントは3つあります。
言語偏重になる
勉強の有限化
ボケとツッコミ
言語偏重になる
勉強とは言語偏重になることです。
言語偏重になるとは、対象を言語的に分解し、操作するようになることと理解してください。
勉強することは、新しい言語を学ぶことです。
新しい言語を、自分に取り入れていく過程が勉強なのです。
この考えを技術士試験にも応用しましょう。
技術士試験では、特有の言葉遣い、考え方が存在します。
技術士試験対策とは、その言葉遣いを自分に取り入れることだと言えます。
技術士的な言葉遣いに、最初は違和感を覚えると思います。
例えば、問題と課題の違いやリーダーシップ(利害関係者の調整)、マネジメント(リソースの分配)の意味など。
しかし、それを受け入れて使用することが大事です。
これを「勉強の哲学」では、過去のノリから新たなノリに移ると表現しています。
過去の自分を捨てて、新たな自分に移る。
この行為は一見、「気持ち悪く」感じてしまう行為です。
なぜなら、周りの環境から技術士的な言語表現は、世間の言葉から浮いてしまうためです。
しかし浮いている状態を受け入れる、「気持ち悪さ」を受容することが勉強の第一歩なんです。
技術士試験の口頭試験に落ちる人の特徴として、試験官とケンカしてしまうということが挙げられます。
技術士的な言語、表現を使うべき環境において、自分のノリ(環境)にマッチする言語表現を用いてしまったことが要因です。
勉強の有限化
「勉強の有限化」も「勉強の哲学」のキーコンセプトであり、技術士試験に生かすことができる考え方です。
技術士試験対策はやろうと思えば無限に実施可能です。
キーワード学習や過去問対策など、数を追いかけると時間がいくらあっても足りません。
本質的に勉強に終わりはない一方、現実的には区切りをつける必要がある。
特に入門レベルでは勉強量を有限化をしないと、挫折してしまう危険性が高い。
継続的に勉強するために、有限化は重要なスキルなのです。
私が技術士試験対策で実施した有限化の例は2つあります。
添削指導を受ける
4x3=12題に集中する
添削指導を受ける
添削指導を受けることは有限化につながります。
独学で試験対策をする場合、何をどこまで勉強すれば良いのか体感することは非常に難しいです。
しかし過去問の添削指導をうけると、不足している知識やスキル、逆に得意な領域がわかります。
足りない知識が分かれば、その分野を重点的に勉強をすれば良いですし、逆に得意分野の勉強は少なくしても問題ない。
これは無限の勉強時間を有限化したということができます。
4x3=12題に集中する
問題を解く数を有限化することも有効です。
私の場合、Ⅰ、Ⅱ-2、Ⅲをそれぞれ4題、合計12問の過去問答案の品質を高め、再現できるようにしました。
技術士試験は、答案の完成度を高めることが重要な試験です。
技術士試験としての原則的な答え方が存在します。
書き方を身に着けるためには、1問1問を完全に覚えてしまうことが有効です。
5年分の過去問を見て、テーマ的にかぶっていない4題を選択し、それらを添削してもらって合格論文を完成させましょう。
4題を完全にこなせば、概ね問われるテーマは網羅できると思います。
なお、2-1は5年分を全て解答できるようにしました。
2-1は量的な負担が少ないですし、知識の面が大きいので5年分、解いても時間が伸びることはないと思います。
ボケとツッコミ
「ボケとツッコミ」はキーワード学習に応用できる考え方です。
勉強の進め方は2種類あり、それがボケとツッコミと表現されています。
ボケとは横展開や発想を広げること。
例えば、あるキーワードを勉強したとして、関連キーワードを考えたり、どんな問題で問われるか想定することが挙げられます。
一方、ツッコミはキーワードを深めていく方向性で、概念的には下方向への広がりです。
例えば、その技術を使った自分なりの工夫点を挙げたり、使用したときのリスクを考えることがあります。
例として、化学部門のキーワードの「カーボンフットプリント」を挙げます。
カーボンフットプリントは、製品を生産する際のCO2排出量を原料の生産時点から追跡する仕組みです。
ボケの方向性として出題される問題の想定をすると、カーボンニュートラル、デジタル化、工場生産、ファインケミカル産業などが挙げられます。
それぞれのテーマの文脈でカーボンフットプリントの意味合いを説明することで、実際の試験で出題された際も応用することができます。
ツッコミの方向性としては、実務の場面での注意点や技術的な問題、導入した場合の社会の影響などを考えていくことになります。
「ボケとツッコミ」という2つのシンプルな観点でキーワードで整理することで、試験の実践にも生かしやすい知識になると思います。