なおきち/技術士

化学メーカーで働く技術士(化学部門)です。 興味は科学と工学。

なおきち/技術士

化学メーカーで働く技術士(化学部門)です。 興味は科学と工学。

マガジン

  • 武器としての技術士思考

    国家資格である「技術士」は、技術者にとって最高の栄誉がある資格です。技術士試験を通して得られる「技術士思考」は、技術者としての成長を促してくれるだけでなく、多くのビジネスパーソンに役立つ考え方です。

最近の記事

技術系社員による学会営業プロセス

私は化学メーカーで合成系の技術職に従事している技術士です。 実験業務が基本ですが、年に1回ほど学会に参加しています。 化学系の学会では、例えば化学会が有名ですが、薬学会や農芸化学会などもありますね。 研究のトレンドを学ぶために参加することもあります。 しかしそれだけでなく、企業展示としてブースを出していることもあるため、営業的に参加することもあります。 自社の製品を売り込むわけですね。 また、学会によっては懇親会があります。 懇親会では気になった先生や企業の方とお話し

    • 「他者と働く」から考える 異動社員との「わかりあえなさ」

      他者と働く難しさを最近、感じるようになりました。 以前までは技術の観点で議論していれば、問題は起きませんでした。 データから仮説を立てて、テスト実験を実施をして、またそのデータを見て考える。 その結果があれば、更なる検討やスケールアップを指示すれば、人が動いてくれていました。 しかし役職としてリーダー業務を行うようになり、様子が変わってきました。 なかなか人に動いてもらえない、あるいはこれでは私が動くわけにはいかないという経験が増えてきたのです。 異動社員との分かり合え

      • 「福山本」に替わる新定番?反応機構を学ぶための「松島本」の魅力

        反応機構学習の定番「福山本」有機化学の勉強では、反応機構の学習は避けることはできません。 反応の理解や合成ルート設計に役立つだけでなく、不純物生成のメカニズム理解にも必要な知識です。 化学企業で働く今、改めてその重要性を感じ、勉強をしなおしています。 反応機構の勉強をするなら、定番は福山本こと、「演出で学ぶ有機反応機構」でしょう。 私も学生時代、本書を用いて勉強しました。 東京大学の福山研究室で行われていたゼミで出題された問題と解答例が収録されています。 ちなみに現在で

        • スケジュールに追われて課題管理が甘くなってしまった

          化学業界で働いている技術士(化学部門)です。 つい最近、仕事である失敗をしてしまいました。 その失敗の要因は、納期を意識するあまり、課題管理が甘くなってしまったことです。 失敗の内容 ある化合物の合成を依頼されました。 スケールアップの必要はあるものの、過去に合成実績があるため、同じ方法を採用することにしました。 実は過去合成時は問題が生じていて、当時はリカバリしましたが、合成法を見直す必要性は感じていたのです。 つまり、より良い合成法への改善が課題でした。 しかし、

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        • 武器としての技術士思考
          9本

        記事

          学びの数をKPIにしよう

          技術士(化学部門)のなおきちです。 私は普段、「学びの数」をKPIとして業務を行っています。 1日1個以上の学びを作り出すことが目標です。 学びの数を重視することで、業務の進捗感を味わうことができます。 また、技術者が持っておくべき観察眼のトレーニングにもなり、おすすめの習慣です。 学びの数をKPIにするとはどういうことか「学び」とは、業務経験で得られた知識です。 昨日までは知らなかったけど、今日新たに知った知識が「学び」です。 実験的には失敗だったとしても「学び」は

          学びの数をKPIにしよう

          研究ディスカッションにおける技術士的「問いかけ」

          私は化学メーカーで技術者として働く技術士です。 技術者として仕事をする上で欠かせないこととして、研究ディスカッションがあります。 研究ディスカッションとは何か ディスカッションとは、「研究の成果を発表後、その成果について他者と議論する行為」です。 大学の研究室、学会会場などのアカデミックな場や、企業の研究開発、製造部で、研究を深めるためや業務を進めるために行われます。 技術系の職場で働く私自身、チームメンバーから受ける進捗報告、週次のミーティング、研究計画案の磨き上げ

          研究ディスカッションにおける技術士的「問いかけ」

          「考える」ための2つの動作 素材集めと並び替え

          「知的生産の技術」は、考えるための「行動」を示しているという点で重要な古典です。 多くの人が影響を受けていると思いますが、私もその1人。 その他の知的生産系の本も読んでいますが、本質は「知的生産の技術」に書かれている2つの動作だと思います。 その2つとは、「素材を集める」ことと、「並び替える」ことです。 「素材を集める」とはどういうことか 「知的生産の技術」では、情報や発見をカードに文章で書き記します。 情報とは、たとえば以下のようなものです。 記事における短い文

          「考える」ための2つの動作 素材集めと並び替え

          技術士試験は技術力の高さが問われているわけではない

          技術士試験で問われていることは何でしょうか。 これを誤ると間違った方向性で勉強を進めてしまい、合格が遠のいてしまいます。 技術士試験は何を評価しているのか よくある間違いは「技術力」が高いほど、合格しやすいという考えです。 このような考えの場合、大学の教科書を読んだり、キーワード集を作りこんで知識のインプットに時間を使うことになります。 しかしこれは大きな間違いです。 結論としては、技術士試験は「技術力」を試しているわけではありません。。 「技術力」という言葉は、あいま

          技術士試験は技術力の高さが問われているわけではない

          「兵は詭道なり」の技術者的解釈

          孫子の有名な一節に、「兵は詭道なり」というものがあります。 もともとは戦国時代を想定していますが、技術者的に解釈しても、実務に応用できる考え方です。 「兵は詭道なり」の技術者的解釈「兵は詭道なり」とは、どのような意味でしょうか。 以下のような解釈が、一般的なようです。 戦争の場面であれば、相手をだますことが、勝利につながっている、という考え方は想像しやすいです。 経営やビジネスの文脈では、競合他社の戦略の穴をつき、正面からは戦わない、というような解釈ができます。 で

          「兵は詭道なり」の技術者的解釈

          「勉強の哲学」の技術士試験的解釈

          「勉強の哲学」は立命館大学教授の千葉雅也さんが書いた人文書です。 勉強することについて、フランス現代思想的な文脈で解説されています。 実は、この本を技術士試験的に解釈すると、試験対策にも使えるんです。 「勉強の哲学」の魅力は、深い勉強の方法論について、哲学的に理解することが可能になることです。 ポイントは3つあります。 言語偏重になる 勉強の有限化 ボケとツッコミ 言語偏重になる 勉強とは言語偏重になることです。 言語偏重になるとは、対象を言語的に分解し、操作す

          「勉強の哲学」の技術士試験的解釈

          化学メーカー技術職が「改善の急所」を読む

          「改善の急所」は、多くの製造業従業員におすすめの本である「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」という本があります。 改善コンサルタントである著者が、製造業を儲ける体質に変えるためのポイントを、シンプルに解説した新書サイズの本です。 著者が技術士(経営部門)ということもあり、手に取りました。 「改善の急所」は、多くの人が読めるように簡単にまとめられています。 しかし本質的であり、私は何度も読み返しています。 直接的に化学業界のことが書いてあるわけではありませんが、私

          化学メーカー技術職が「改善の急所」を読む

          技術士はアイデンティティクライシスの処方箋になるか?

          アイデンティティクライシスとは何か 個人が自己のアイデンティティや自己認識に対して、不確かさや混乱を経験する心理的な状態を「アイデンティティクライシス」と呼びます。 30-40代の管理職が抱えるキャリアの問題として、最近注目されているようです。 私は化学系のメーカーで技術者として働いていますが、技術者においてもアイデンティティクライシスは重要な問題です。 技術開発の仕事をバリバリこなしていた技術者がチームリーダーとなり、苦しんだ末に転職したという話はよく聞きます。 技

          技術士はアイデンティティクライシスの処方箋になるか?

          なぜ技術職が孫子を読むのか

          有機化学系の研究員として化学メーカーで働く私が、職場をイメージして孫子を読む。 誤読を許容しつつ、孫子から学ぼうとするシリーズです。 以下の書籍を参考にしています。 なぜ孫子を読むのか 孫子は中国を代表する兵法書です。 歴史上の人物のみならず、現代の経営者も影響を受けています。 兵法書なので、書かれていることは戦争に関する内容です。 しかし、その戦略・戦術論は人間洞察に富んでいて、多くの領域で応用することが可能です。 化学メーカーで働いている私も、チーム運営を経験して

          なぜ技術職が孫子を読むのか

          専門的学識と専門知識は何が異なるのか

          技術士試験に合格するためには、コンピテンシーの理解を深めることが重要です。 また技術者として働いていくうえで、「技術士思考」を身に着けることはメリットがあります。 「専門的学識」は技術士コンピテンシーの一つです。 「専門知識」とは異なる点が、専門的学識を理解するポイントです。 専門的学識と専門知識の違いは何か早速、専門的学識の定義を確認します。 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用する

          専門的学識と専門知識は何が異なるのか

          技術者全員が持つべきリーダーシップ

          技術士試験では、コンピテンシーに基づいて合否が決定されます。 よってコンピテンシーの理解が重要です。 しかし技術士コンピテンシーの1つであるリーダーシップは、一般的にイメージする言葉の意味と異なるため、注意が必要です。 技術士試験における「リーダーシップ」の定義技術士リーダーシップは、組織の中で1人だけが持つものではありません。 「リーダーシップ」と聞くと、「リーダー」が持つものであると考えないでしょうか? リーダーは部長やチームリーダーなど、役職と結びついていることが多

          技術者全員が持つべきリーダーシップ

          文章を設計する感覚で技術士論文を書く

          技術士論文の書き方を身に着けることが、試験合格への近道です。 もちろん専門知識を覚えることも重要です。 しかし私自身の添削経験から言うと、論文の「書き方」が身についていないために不合格となっている人が多いのです。 書き方を改善すれば、合格に近づくことができます。 まずは論文の書き方を身に着ける。 作成した論文の添削を経て、必要であれば知識を足していくという流れが勉強手順のベストです。 論文の書き方を学ぶ際には、あるコツがあると思っています。 「文章を設計する」という意識

          文章を設計する感覚で技術士論文を書く