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グループワークの人数と役割分担
いよいよ今回からフューチャー・デザイン導入授業のコツとノウハウを解説していきます。今回はグループワークの基本設計について説明しましょう。関連資料は以下をご参照ください。
一般に、フューチャー・デザインでは、最適なグループ人数は4人程度、役割分担は決めないで、自発的に会話が盛り上がる井戸端会議を目指すこととされています。しかし、授業では様々な制約があるため、私は次のようにアレンジを加えて実施しています。
1グループの標準人数は5人
グループワーク授業を10年以上担当してきた経験から、私や同僚はグループワークの標準人数を5人に設定しています。その理由は2つあります。
1つ目の理由は、5人というのが、欠席者が出た時にグループワークが成立する絶妙な人数だからです。特に後期はインフルエンザ等で欠席者が増えがちですが、1つのグループから3人欠席する確率は極めて低いです。実際、5人✕10グループ✕3クラス以上✕10年以上グループワークを指導してきて、1つのグループから3人欠席したことはほとんど記憶にないくらいなのです。だから、欠席者の実質最大人数は2人/グループとなります。3人いるとグループワークは成立しますが、2人だとペアワークになってしまいます。
2つ目の理由は、5人というのが、フリーライダーが出にくいギリギリの人数だからです。6人以上いると1人があまり貢献しなくてもそれなりにワークを進めることが可能で、メンバも「1人くらいなら仕方ないか・・・」と渋々容認できると思いますが、5人だと1人の責任が少し重くなり、みんなでやらないといけないという空気になりやすいです。もちろん、授業の最初にできるだけ積極的に参加するよう伝えますし、遊んでいると減点するぞと釘も差します。そして、次に示す通り、全員何らかの役割につくことを必須にして、他人任せにできない環境を作っています。
たどり着いた役割設定
長らくいろいろな試行錯誤を繰り返し、部局内のFaculty Developmentで情報交換を繰り返し、私の授業では次のように役割分担を設定しています。
ファシリ(大変なので加点対象)
中立の立場で他人の発言を褒めながら、いい雰囲気を作って司会進行する
話し合いが順調なら意見は控え、停滞や混乱がある場合は積極的に意見する
時間をしっかり管理する
リーダー(大変なので加点対象)
決断を求められたら決断する
授業外で集まる場合に主導する(授業中に発表資料が完成できなかった場合など)
欠席者からの問い合わせに対応する(連絡があった場合)
記録係(大変なので加点対象)
話し合いで出た意見をホワイトボードシートに書いていく
写真を撮って後で提出する
言い出し・盛り上げ係
話し合いの最初に意見を出す(ファシリはまずこの人に振れば良い)
グループワークを盛り上げる
発表・盛り上げ係
班を代表してクラス全体に発表する
グループワークを盛り上げる
まず、ファシリとリーダーをわけているのがポイントです。リーダーだけを設定して他の役割を作らないと、良くも悪くもリーダーだけに負担がかかって、リーダーが頑張るグループが良いグループみたいなことになってしまいます。実際、比較的小さな組織ではリーダーがファシリを兼ねることが多いです。しかしそれではグループワークの教育効果は望めません。そこで、ファシリとリーダーを明確に分け、回す人と決める人を分離しました。
次のポイントは板書係の設定です。板書係を置くことにはグループワーク上のメリットとデメリットがありますが、私は別の理由からあえて必ず板書係を置いています。その理由は、グループワークで自分の意見を述べるのが苦手な学生の避難先になり得るからです。出てきた意見を書いていく作業自体も重要なので、そこで活躍すればあまり自分の意見を積極的に出せなくても充分グループワークで貢献したと言えますし、メンバも認めてくれます。
少し変わった役割として、言い出し係というのがあります。これは他の先生から聞いて良いなと思って取り入れた役割です。最初からファシリが得意な学生はほとんどいないため、この役割があることでファシリが最初につまづくことを防げます。授業では時間の制限が大きいため、1つ1つのワークをゆったりとやっていくことができません。なかなか意見が出ず、モジモジやっていると、あっという間に終わってしまいます。
最後の役割は発表係です。普通はリーダーが発表するものですが、私の授業ではあえて別の人が発表するようにしています。グループを代表して全体発表する機会は決して多くはないので比較的楽な役割なのですが、発表するためには話し合って決めたことをしっかり把握しておく必要があります。だから、遊んでいられないのです。
以上の設定はあくまでも私のグループワークにおける標準設定で、フューチャー・デザインの授業でもそのまま使ってうまく行っているように感じています。参考にできる部分は参考にしていただき、ぜひもっといい方法を開発し、それをフューチャー・デザイン・コンソーシアムに教えてください。