「心理試験」読めました
※なんで「心理試験」を読もうと思ったかって?「D坂の殺人事件」のレポを読んでくれよな!
あらすじ
蕗屋は斎藤から、斎藤が住む部屋の家の主である老婆が、大金を自宅に隠していることを聞いた。
貧乏だった蕗屋は、老婆を殺害し盗み取ることに決め、自分が犯人として疑われないためのトリックを編み出し、実行する。
老婆殺害の嫌疑者には蕗屋と斎藤が挙がった。
疑われないための準備万全の蕗屋、まさか嫌疑者になると思っていない斎藤。
笠森と明智は、2人に心理試験を仕掛け、事件の真相を暴いていく。
蕗屋清一郎
犯人の頭が良すぎる
この話の犯人はこいつです。
ただ、この犯人、めちゃめちゃ頭が良い。
犯行の手口は以下の通り。
事前に老婆の自宅を訪問し、「隠す」という言葉を発した時の目線から、大金の隠し場所を明らかにする。犯行当日は、あえて変装せず、何も変わった素振りをすることなく、昼間に現場に入り、老婆を腕で絞殺。その際、もがく老婆は偶然屏風をひっかき、屏風に傷をつけてしまう。その傷を見た蕗屋は作戦の妨げにはならないと判断し、スルー。目星を付けていた松の植木鉢の下から大金の半分を財布に入れた。老婆が蘇生するのを防ぐため、ジャックナイフでとどめを刺した後、何食わぬ顔で現場から優雅に逃走。凶器は捨て、盗んだ金は警察に届けた。
普通の殺人犯とは違った雰囲気を持つ蕗屋。蕗屋は、
”怪しいことをすると疑われる。逆に、堂々としていれば疑われない。”
という考えのもと、トリックを考え、実行したのです。
だから変装もせず、昼間に犯行を犯したのね。
しかし、なんやかんやで老婆殺害の嫌疑者に、蕗屋が挙がってしまいます。
犯人だとバレないように考えた蕗屋の作戦は以下の通りです。
心理学をかじっている笠森判事が操作に参加することが分かった蕗屋は、心理試験の練習する。試験の内容は2つ。
1つ目は、質問中に脈拍等を計測するもの。(嘘発見器みたいなやつだね)これは、蕗屋にとって不思議なほど余裕なものだった。事件のことを答える時、全く緊張しないのである。
2つ目は、ある単語から連想される言葉を発するまでの時間を測るもの。(「海」と言われたら「青!」みたいな)難点は、事件に関する言葉を連想する時間と、答えの内容である。入念な準備をする蕗屋は、事件に関する言葉に対して、あえて事件に直結する言葉を用意した。例えば「植木鉢」であれば、「瀬戸物」ではなく「松」と答えるというように。事件の内容を知る者として警察に知られている以上、脈絡のない答えを言う方が不自然であると考えた。これらの言葉がすぐに口に出せるよう、練習したのである。
考えすぎなほど考える蕗屋。先を見通す力が半端ない。考えた甲斐あってか、笠森の操作を混乱させることに成功しました。その能力、他のことに使ってほしいです。
あと、こいつ全然罪悪感ないのね。「海と毒薬」の戸田に似ています。
私はこういうやつとは分かり合えません。
斎藤勇
かわいそうなやつ
蕗屋の犯行後、老婆の自宅を訪れた斎藤は老婆の死体を目にする。魔が差した斎藤は、植木鉢の下の大金を持ち出してから警察のところへ向かった。ところが、懐に大金を忍ばせたまま警察に事情を話しに行ったため、殺人の嫌疑者として捕まってしまう。容疑をかけられたまま、心理試験を受ける。
かわいそうすぎます。盗みに加えて殺人の容疑までかけられるなんて。
おっちょこちょいにも程があります。大金持ったまま行くなよ。
もう一つかわいそうなのは、殺人の疑いを晴らせないことです。いくら、やってない!と言っても大金を持っていたために信じてもらえません。
これは蕗屋が犯人だという証拠がないとまずいです。
明智小五郎
心理試験の結果を基に、笠森判事は筋の通った仮説を導きますが、自身でも何か引っかかる様子。
そこで登場、明智小五郎。
注目したのは2つ目の試験の単語を答える速さでした。蕗屋の回答する速さに不自然な点がありました。それは、事件に関する単語から連想される言葉を発する速さが、他の単語より少し早いというところです。
明智は、蕗屋が予め心理試験を練習していたことを見抜きます。
「斎藤を有罪と決した」と言い、蕗屋を呼び出し、落としにかかる。
何気なく、屏風の話を持ち出した明智。傷について何か知っているかと問うと、蕗屋は安心しきった顔で屏風の話をし始めた。
実は、屏風は事件前日に老婆の自宅に置かれたものであった。蕗屋は事件2日前から老婆の元を訪ねていないと供述していたため、屏風を知っているとなると矛盾が生じる。
明智はこれを指摘し、蕗屋が犯人だと確信できた。
よくやってくれた明智。蕗屋を無事成敗できました。
心理試験は時に、冤罪を招いてしまいます。この危険性を理解した上での推理、さすがでござんした。
おわりに
勘の良い読者ならお気づきだろうが、(←これ腹立つよね)蕗屋は屏風に傷がついたことをスルーしているのです。
長年、コナンを見てきた経験から考えると、犯人が見落としたところに、鍵があるんですよね。犯人は必ずボロを出します。完全犯罪や不可能犯罪なんてないんです。
屏風、絶対何かあると思ったぜ…。
推理ものあるあるは他にもあります。
私が知っているのは、「犯人は必ず現場に戻ってくる」です。
多くの犯人は戻ることで証拠を描き消そうとします。でも大体、戻ることでバレちゃうんですけどね。
蕗屋は戻りませんでした。犯人に思われないための作戦だったのかもしれません。しかし、蕗屋の場合は、戻らなかったことが仇となっています。戻っていれば、屏風のことを知っていてもおかしくなかったのですから。
私も悪さをするときは、蕗屋のように裏の裏までよく考えてから実行することにします。(やりません)(考えられません)
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