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ドラマ「終りに見た街」を見た。ものすごく後味が悪いけど、多分見て良かったんだと思う。

久し振りに、こんなに後味の悪いドラマを見た。
決して「つまらない」という意味じゃない。
でも「見なきゃ良かった」と心底思った。

それがこの「終りに見た街」。

脚本はクドカンだし主演は大泉洋さんだし、戦争ものだけど、きっとなんとなく大丈夫でしょ!的な気持ちで見はじめた。

最初は仕事をしながら「ながら見」していたのだけど、気づけば手が止まって真剣に見ていたので、これはちゃんと見た方がよさそうだな…と、仕事を終えて寝る前に見た。

結果、眠れなくなった。
寝る前に見ちゃダメなやつだった。

ということで、ここからはネタバレ含めた感想を残しておこうと思うので、見ようと思っている方、興味のない方はここまでで。


あらすじはこんな感じ。

テレビ朝日でドラマの脚本家をしている主人公、田宮太一(大泉洋)は、しっかり者の妻ひかり(吉田羊)、高校生の娘、信子(當真あみ)、小学生の息子、稔(今泉雄土哉)、認知症が出始めた母、清子(三田佳子)と共に、郊外の一軒家でありふれた日常を暮らしていた。

ある日プロデューサー(勝地涼)から『終戦80周年記念スペシャルドラマ』の脚本を無茶ぶりされ、渋々引き受けることに。太一は膨大な資料を読みふけるうちに眠ってしまい、目を覚ますと家の周りが雑木林に。
家ごと昭和19年にタイムスリップしてしまった。

同じようにタイムスリップしていた小島敏夫(堤真一)と息子の新也(奥智哉)と、終戦までの約一年を乗り越えようとするのだけど、だんだんと「自分たちだけが助かっていいのか」という思いになり、昭和20年3月10日に起こる東京大空襲をひとりでも多くの人に伝えようと奔走する。
一方で田宮の娘 信子と小島の息子 新也は、戦時中の教育に染まっていき「みんなお国のために戦っている」「国のために働くべきだ」「日本人を殺す米国人が憎くないのか」と言い始める。

そして東京大空襲が起きる3月10日、空襲の記録がない荻窪に空襲がはじまる。「荻窪に空襲があったという記録はないのに」と逃げる田宮。その時、閃光が走り爆風に吹っ飛ばされる。

目が覚めると瓦礫の中にいた田宮。記録用にと持っていたスマホから通知音が鳴る。その音で顔を上げると、コンクリートの建物やスカイツリーの残骸のようなものが見える。
近くで倒れている人に「今は何年ですか」と聞くと「二千にじゅう…」と言い息絶える。
その時、幼い頃の母を背負った新也が前を通る。二人は田宮を微笑んで見たあと歩き去る。

瓦礫の街に消える二人。それが田宮の「終りに見た街」だった。

タイムスリップものは色々あるけど、家族みんなでって見たことないし面白いなあというはじまりだった。

子供達は最初、雑木林の中の自宅を見て「ポツンと一軒家じゃん!」(さすがテレ朝)と言ったり「高島屋は?」「はま寿司は?!」なんて言ってたのに、しばらくしたら「お国のために」とか「僕も戦いたい!」とか言い出す。
対して大人たちは、空襲で被害に遭う人を減らそうとビラをまいたりする。

さて、ここで思う。
自分だったらどうするのか。

1年頑張って生き延びれば、戦争は終わる。
でも、戦争が終わったところで現代に戻れるものでもないのだから、そこで生きていかなきゃいけない。

知り合いもいない、スマホはもちろんテレビも何もない。食べるものもろくにない。空からは爆弾が降ってくる。
そこで生き抜かなきゃいけない。

その状況で、自分は誰かを救おうとするのか、自分だけ生き延びようとするのか。
それとも子供達のように「お国のために…!」と染まってしまうのか。

考えてみたけど、どうしても分からない。
多分本当にその状況になってみないと、自分がどうするのか見当もつかない。
そんな状況には絶対になりたくないけれど。


そしてラストシーンで田宮が見た、おそらく現代の東京。

彼らがビラを撒いたことや、子供たちが何かしたことで未来が変わってしまったのかは分からない。

ただ、瓦礫の街と化した現代の東京。
倒れた人が水を求めていたことから、おそらく落とされたのは原爆だと推測される。

あの色のない瓦礫の街と、それを見つめる田宮の目が脳裏に張り付いてしまって離れない。

本当に見るんじゃなかった。しかも寝る前に。


そして今日、テレビをつけたら、「イスラエルがレバノンに攻撃をはじめた」と、大量のミサイルが空を飛ぶ映像が流れていた。

田宮が見たあの景色は、人ごとじゃない。

日本では戦争は過去のことかもしれないけれど、今も世界のあちこちで戦争や紛争は続いていて、自分が暮らしている町を突然破壊された人たちがたくさんいる。
田宮のように、瓦礫となった街を茫然と眺めた人もいるだろう。

本当にただただ理不尽だし、戦争でいいことなんて一つもない。

民族的な問題とか宗教的なこととか、色々問題はあるとは思うけど、殺し合わずに解決できる道はないんだろうか。
すぐ報復とかいうけど、人間なんだから話し合いとかで穏便にできないものなのか。


ずどーんと落ち込んだ私に、TVerさんが「これも見たらいいさ」と勧めてくれたのは、このドラマ「終りに見た街」のキャスト3人(大泉洋×吉田羊×堤真一)が語るトーク番組。

(クリックでTverに飛びます。10/5まで視聴可能)

堤さんが、捕まえた玉虫を持って嬉しそうだったりして、3人がとても明るく平和でとても救われた。

救いをありがとう、テレビ朝日。


にしても、今まで結構戦争ドラマとか映画を見てきた方だと思うけど、ここまで後を引いたのは、昔に見た(多分小学生の頃)「戦艦大和の最後」みたいなドラマ以来だと思う。
あの時も、沈みゆく戦艦と戦う人たちが脳裏に残って眠れなかった。

いやでも。
今の私は48歳。
それが眠れなくなるってどうよ。

なんというか「戦争は良くない」とかそういう理屈抜きに、ただ本能的に恐怖を感じるドラマだった。


ちなみにこのドラマ、原作は山田太一さん。
終り方は同じらしいけど、主人公の設定などは違うから一度読んでみようかと思う。


ああほんと、見なきゃ良かった。
でも多分、見て良かったんだろうな。

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オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン
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