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【第3巻】ボブ・ディラン:時代を超えた吟遊詩人
【第1巻】
【第2巻】
第八章:迷走と復活、そして伝説へ
ボブ・ディランは1980年代に入ると、それまでの宗教的なゴスペル時代から徐々に離れ、再びロックの世界へと戻り始めた。しかし、この時期の彼の音楽は、かつてのような革命的なエネルギーを持っていたわけではなかった。
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しばらくの間、自らの音楽の方向性を見失っていた。1983年のアルバム『Infidels』は、「宗教的な信仰を超え、現実世界へ目を向けた作品」として評価されたものの、それ以降のアルバムは批評的にも商業的にも低迷していく。
1985年『Empire Burlesque』、ディランはこのアルバムで、当時流行していたシンセサイザーやエレクトロニックなサウンドを取り入れた。しかし、多くのファンはこの「ディランらしくない」サウンドに困惑し、アルバムの評価は芳しくなかった。
1986年『Knocked Out Loaded』 & 1988年『Down in the Groove』これらのアルバムも、ほとんど注目を浴びることなく、ディランのキャリアの中で最も低評価の時期を迎えていた。
彼はインタビューでこう語っている。
「俺はただ、次に何をすべきか分からなかった」
かつて時代の最前線を走り続けていたディランは、もはや音楽業界の「古い世代のミュージシャン」と見なされつつあった。
1988年:「Traveling Wilburys」結成とロックの仲間たち
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