おじょーと熱
夕木くんは熱がでた。
そういうことで、今は床に伏せている。
隣の部屋から、おじょーの音が聞こえる。
軽快なタイピングのタッチ音と、
ポリポリ何か食べる音だ。
さっき夕木くんのためにいろいろ買い出しに行ってくれた際、お菓子を買ってきたのだろう。
おじょーの音が心地よい。
いつの間にか眠りにつく。
おじょーがいるという絶大な安心感が、私の心を融解する。泥のように眠る。
喉の不快感とともに目覚める。
おじょーは変わらずそこにいる。
たまに心配をしてこちらに来てくれる。
少しおじょーを触る。
おじょーの存在がとても嬉しい。
迷惑をかけている申し訳なさはあるし、不甲斐なさも相まって、甘えることのできない自尊心と、甘えたい弱さがつねに葛藤している。
こういうとき、素直になれる人がどんなに羨ましいか、自分の性格を疎ましく思う。
咳がつらい。
咳をすると、おじょーが心配そうな顔をする。
体が弱っている。判断力が鈍る。
戸惑う。横になることを体が求める。
私に今できることは信じることだけだ。