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完全に労働から解放されたあとの世界を想像しよう。人には本能的な「貢献欲」がある

2018文字




現代社会において、経済的な利益や自己利益を追求する行動が主流であるが、私たちは、人々の貢献欲によって世界がうまく回る社会の到来を強く願っている。


貢献欲とは、自らの能力やリソースを他者や社会のために使う意欲であり、これが社会の構成原理となる社会は、より持続可能で幸福な未来を築く鍵となる。本稿では、貢献欲に基づく社会の実現を願う理由と、その理論的根拠について述べる。



貢献欲の意義


貢献欲は、他者に対する利他主義の一形態であり、個人が社会の一員として、他者に対する貢献を通じて自己実現を図る欲望である。


このような欲望は、ただ単に道徳的に称賛されるだけでなく、社会全体の幸福度を高め、個々の個人にとっても豊かな人生をもたらす。


心理学的な研究によれば、他者への貢献は、個人の満足感や幸福感を向上させる要因の一つである。例えば、マーティン・セリグマンの「ポジティブ心理学」では、人間の幸福は他者とのつながりや、他者に対する貢献によって得られるとされる。このため、貢献欲を基盤とした社会は、個々人がより豊かに生きることを可能にするだけでなく、社会全体の幸福度を高める要素となりうる。




貢献欲と持続可能性


貢献欲に基づく社会は、持続可能な社会を築くための重要な要素でもある。


経済活動が主に利己的な利益の追求に依存している現代社会では、短期的な利益を優先するあまり、環境破壊や資源の枯渇といった問題が発生している。しかし、貢献欲が社会の中心的な原理となれば、長期的な視点から他者や未来の世代に対する責任が重視されるようになる。


また、経済学の視点からも、貢献欲に基づく社会は合理的であると考えられる。例えば、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」では、短期的には自己利益を追求することが最適解とされるが、長期的には協力的な行動がより大きな利益をもたらすことが証明されている。


貢献欲による協力的な行動が広がることで、社会全体がより大きな利益を享受できるという理論的裏付けが存在する。



貢献欲の進化的根拠


人間が貢献欲を持つ理由は進化心理学的にも説明可能である。人類の進化の過程において、集団生活を営むことで生存率が向上したという歴史がある。


協力や分業、他者への貢献は、個体の生存や繁殖にとって有利な行動であり、進化の過程で人間は自然と協力的な性質を持つようになった


このため、貢献欲は人間の本質的な欲求の一部であり、これが社会的に広く認識され、奨励されることで、より調和のとれた社会が形成される可能性が高い。




テクノロジーと貢献欲



さらに、現代のテクノロジーの進化は、貢献欲を活用した社会の到来を現実的にしている。インターネットを通じた情報の共有や、クラウドソーシング、オープンソースプロジェクトなどは、無償で他者に貢献する行動が社会的価値を生み出す例である。これらの技術は、個々人が自らのスキルや知識を貢献することを可能にし、それが社会全体の発展に寄与することを示している。


特に、人工知能や自動化技術の進展により、人々が機械に取って代わられるという懸念がある中で、人間の創造性や共感力、貢献欲は、これからの社会において重要な役割を果たすだろう。貢献欲に基づく行動が社会を支える新たな価値基準となり、物質的な富よりも精神的な充実感が重視される社会が実現する可能性が高まっている。


さらにベーシックインカムによる労働からの解放が起きると、そもそも労働とは何かを再定義する契機にもなる。従来、労働は経済的な報酬と結びついていたが、ベーシックインカム制度のもとでは、労働は自分自身や他者、そして社会全体にとって意味のある活動へと変わる。


特に、テクノロジーの進化によって自動化が進む中で、機械に取って代わられない人間の強みとして、創造性や共感力がますます重要になる。貢献欲を基盤とする労働は、これらの人間的な特性を活かす新しい形態の労働を生み出すだろう。


また、労働からの解放が進むことで、経済的な格差の是正や、働くことに伴うストレスの軽減が期待できる。ベーシックインカムは、労働に関する不平等を解消し、すべての人が平等に生きる権利を享受できる基盤となる。これにより、貢献欲を持った行動が経済的な制約を超えて広がり、社会全体が調和的に発展する可能性が高まる。


未来へ向けた提言


貢献欲による社会の実現は、ベーシックインカム制度の導入によってさらに現実味を帯びる。ベーシックインカムが生活の基本的保障を提供することで、労働は生計を立てるための手段から解放され、人々は自己実現や他者への貢献を中心にした行動を選択できる。これにより、貢献欲を基盤とする社会は持続可能で調和の取れた未来を実現し、テクノロジーの進化と共に新たな社会の構築を可能にする。労働の概念が再定義され、経済的な不平等が解消されることで、すべての人が貢献欲に基づいて行動することが奨励される社会を目指すべきである。








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