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略字の世界~その1~(漢字の分類とか)

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筆者は、この記事を最近読みました。
日本語を学ぶスウェーデン人の女性(漫画家)。彼女は勉強熱心で、日本の文化も広く学び、漢字も大分と習得しているにも関わらず、「間」の略字が長年読めなかった、という話。

よく見かける「間」の略字

私たち日本人は、通常に習う常用漢字以外にも色々と混ぜこぜに漢字を使っています。自分が書かなくても、見たことがある、読むことはできる、というものも多いと思います。

上の「間」の略字もほとんどの日本人は読むことができるのではないでしょうか。それはおそらく、外国人が楷書体のみによって文字を覚えるのに対し、日本人は楷書体に限らず少しくずれた行書体に見慣れているのも理由と考えられます。

楷書体:一画一画の点画が離れている書体
行書体:点画のつながりが起きたり、少し省略が起きるややくずれた書体


漢字は海!大海原!沼!深淵!と毎度思うわけですが、今回は「略字」について取り上げてみたいと思います。



YouTube動画はこちら↓↓


略字とは


さて。
略字は、ざっくり言えば、正式な文字から省略が行われた文字

でも実は、略字の語義を真っ向から説明しようとすると結構大変。”正式”って何?という話がまず難しい。時代によっても、中国と日本においてもまったく異なるからです。

かなりややこしいのですが、少しだけ説明しておきます。


漢字の分類


小中学校で習う漢字、すなわち常用漢字は2136字。それに加えて名づけに使える人名用漢字は863字。基本的にこの約3000字の文字数(+ひらがなカタカナ等)で、私たちはほとんどのメディアで見る文章を読みこなしています。

しかしながら、漢字は総数は5万とも6万、それ以上とも言われます。通常使う漢字の他にも沢山たくさん漢字が存在するのです。

常用漢字、正字、俗字、新字体、旧字体、繁体字、簡体字、異体字・・・漢字をカテゴライズする言い回しは色々あって、本当にややこしいもの。略字はその中でも何らかの”正式”ではないもの、とは言えるでしょう。

以下、ざっくりまとめておきます。各種字体について「国」「体」「渋」「谷」という文字を例に挙げておきます。

常用漢字
一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安(内閣告示「常用漢字表」で示された漢字)
EX.「国」「体」「渋」「谷」

人名用漢字
名前に使用できる漢字のうち常用漢字を含まない字

正字
漢字の書写において正規の字体で書かれた文字。『康煕字典』に載録された字体が正字の基準
EX.「國」「體」「澁」「谷」

新字体
第二次世界大戦後に告示された漢字表に示された漢字の字体のうち、従前の活字と異なる形となった簡易字体
従前のものからすれば、新字体は略字であって常用漢字。
EX.「国」「体」「渋」「谷」

旧字体
新字体に対し、第二次世界大戦前に使用されていた漢字の字体。
EX.「國」「體」「澁」「谷」

簡体字
1950年代以降、中国で「文字改革」政策により簡略化された漢字の字体。繁体字に対して略字であるが、現代中国では正式なもの。
EX.「国」「体」「 涩」「谷」

繁体字
簡体字ではない漢字の字体。すべてではないが、日本の旧字体、台湾、香港、マカオなどで使用される。
EX.「國」「體」「澀」「穀」

俗字
主に手書きで用いられ、世間で通用するが正格ではない字体の文字。また別に、正統とされている文字に対する異体字を指すこともある。
本来誤字であったものが、一般化して正式な文字として昇格したものも多々ある。(これについてはまた記事にしたい)
EX.「囗」の中に点、「体」「渋」「谷」の俗字は無い(現在の常用漢字から見ると)

略字
主に手書きで用いられ、漢字の本来の字体から点画を省略したもの。また漢字の一部に別の記号をあてがったもの。俗字と呼ぶことも。
EX.「囗」の中に点、「体」「渋」「谷」の略字は無い(現在の常用漢字から見ると)

異体字
漢字の字体のうち、意味や音が同じで標準字体以外のもの。広義で言えば、新字体に対し旧字体は異体字、(繁体字に対して簡体字は異体字ではない)、略字・俗字も異体字である。
EX.「國」「圀」他、「體」「軆」「躰」他、「 涩」「澀」他、「穀」他

略字は原則的に、行政文書、教科書、テレビなどマスメディアなどで使われることはありません。

ここからは実際の文字で、イメージ掴んでみてください。


「間」


まずは冒頭の「間」。日常で実際に最もよく見かける略字のひとつと言えましょう。

間 ⇒ 常用漢字、新字体、繁体字
间 ⇒ 簡体字
閒 ⇒ 旧字体、異体字

そして先ほども見た通り、「間」の略字はこれ↓↓ フォントで表示することはできません。また、略字であり俗字であり、異体字とも言えます。

中国の簡体字とも似ているけれど、日本の「間」の略字はたいてい真ん中に縦棒が来る。

門構えって書くの面倒だよねということで、「間」に限らず、「門」「聞」「関」などの門構えの字も同様の略し方をします。

ちなみにこの略字や中国の簡体字は、「門」の字の行書体からこのような略字が作られていると考えられます。
(ひと口に行書体と言っても書き方は様々あり、これは一例です)

行書体の「門」
この行書体から、逆に線を直線化して楷書化したものが略字となった


「曜」


曜日の「曜」。これ以外で使うことはあまりないかもしれませんが、曜日は日々のことなので日常的に頻出漢字で、書くこともそれなりにあると思います。

曜 ⇒ 常用漢字、新字体、繁体字、簡体字
𫞂 ⇒ 略字、俗字、異体字
※「櫂」のように、(日偏に)右上のヨの横画が斜めのものが旧字体ですが、表示することができませんでした。

「日𫞂日やってます」「火𫞂までによろしく!」など見かけたことがある人も多いのでは。横画ばかりで鬱陶しいので、簡素に「王」としてバランス的に最後点を打ったのかな。


「第」


第〇回など、こちらも比較的日常に目にする漢字。

第 ⇒ 常用漢字、繁体字、簡体字
㐧 ⇒ 略字、俗字、異体字

「第1回」を「㐧1回」と書くことはままありそうですが、「及第点」を「及㐧点」とは書かなそうなイメージ。

ちなみにこの略字は、草書体から作られています。

「第」の草書体


「職」


職員室、退職、職務など、度々使いますが如何せん画数が多い!

職 ⇒ 常用漢字、繁体字
职 ⇒ 簡体字
軄 ⇒ 異体字
𫟉 ⇒ 略字、俗字、異体字

なぜ耳偏に「ム」になったかは不明。まあでもかなり使い勝手良いのでは!


「魔」


あまり書くことがない漢字かもしれませんが。

魔 ⇒ 常用漢字、新字体、繁体字、簡体字
※旧字体は「林」の部分が、「ホホ」(最後ハネ)のようになっているのですが、表示できませんでした。

「魔」の略字、俗字、異体字

そして略字も出すことができませんでしたが、なんとまだれの中にカタカナのマ。筆者は実際に見かけたことはありません。

「魔」は「マ」と読むのだから、まだれと「マ」でいいじゃん!と誰かが使い始め、賛同を集め広まったのでしょうね。
ちなみに、「摩」も同様の略字を使うことがあるようです。


「機」


画数の多い文字が続きます。略したいわけなのだから当然。

機 ⇒ 常用漢字、繁体字
机 ⇒ 簡体字
栈 ⇒ 俗字、異体字

「機」の略字、俗字、異体字

こちらも略字は表示できず。そして筆者はこれも実際には見かけたことはありません。知らずに見たら、ぱっと見「ネキ」ネット用語かなと思ってしまいます。

「機」は「キ」と読むから木偏に「キ」。「魔」と同じパターン。カタカナ便利説。


さて、次回はもっとぶっ飛んだ?略字をご紹介していきたいと思います。


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