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#7『誰も知らない偉人伝』白駒妃登美
私はいわゆる愛国者で、でもネトウヨの類ではなく、隣国に対して軽蔑的な考えも持っていない、単に日本人であることを有難く思っている人間です。
「日本は実はね…」という趣旨の本を色々と読んでくる中で、知っているエピソードも増えてきた。なのでこの本も新鮮さや戸惑いよりも、確認するような感じで読んだ。
愛国的な本というのは一般にはどう受け取られるのだろうか。私たちには日本人の美談に対して斜に構える癖がついてしまっているように思う。昔は私もそういう所があった。でもそれは実は身内贔屓の裏返しで、配偶者や子供にこそ辛く当たったり駄目出しするのに似ている、と思っている。家族や親友については、その良い部分を出来るだけ注視し尊重するのが良いと思う。それは罪や欠点を揉み消すことと必ずしも同義ではないし、身内を美化して幻想に立てこもるのとも違う…なーんてことをいつも思っている。
本書は「日本人の良い所を見ましょう。こんな話があります」という目的と話法の本。個人的には、もう少し熱量を下げてくれても良い。でもこんなふうに優しく語り掛けることも必要だよな、と思ったりもする。日本人の心を愛国的に染め直していくためには。
著者の考えが如実に出ていて、心から共感した一節。
「どれだけ正しい知識を得たとしても人々が怯え続ける限りその知識を活用することなんて出来ません。恐れを手放し愛に生きると決めた時、知識は知恵に変わるのです」99
敗戦後の孤児と昭和天皇のやり取りで落涙した。天皇という特異な存在、心に宿る崇敬という感情、親を慕う子の心、肉体は死んでも魂は不滅ということ、愛が人を生かすということ…これらのことが、短い会話の中で幾重もの波紋を起こしている。
「陛下は…悲しそうな表情で言葉をかけられました。「お淋しい?」
女の子は…「いいえ、淋しいことはありません…お父さんに会いたいと思う時、お母さんに会いたいと思う時、私は御仏様の前に座ります。そしてそっとお父さんとお母さんの名前を呼びます。するとお父さんもお母さんも私の傍にやって来て、私をそっと抱いてくれるのです。私は淋しいことはありません…」
その時一瞬、陛下のお顔が変わったように随行の者たちには思えたそうです…
「仏の子供はお幸せね。これからも立派に育っておくれよ」
そうおっしゃった陛下の目から数滴の涙が…畳の上に落ちていきました。
すると女の子が思わず陛下に向かって呟いたのです。「お父さん…」
…「戦争のために大変悲しい出来事が起こり、そのために皆が悲しんでいるが、自分も皆さんと同じように悲しい」
そして深々と頭を下げられたのです。遺族席のあちこちからすすり泣きの声が聞こえてきました」 120
深い共感だけが癒せる傷があり、元気づけられることがある。それをすることが出来るのは特殊な人に限られている。誰にも所有されていない、しかし誰とも繋がっている存在だけが、神や仏やその他諸々の代理人として言葉を発し、届けることが出来る。私たちはそういう存在を『モモ』とか『星の王子様』として知っているけれど、それが人間界に生身で存在するのが日本における天皇であると理解している。
しかしそのような特異な存在が存在し続けていくためにはいかほどのコストがかかることか。それはかけるに値するコストなのである、と思う。
他にも沢山、日本人のいかにも日本人らしい美徳や謙虚さや友愛の精神を、事実に照らし、どんな外国をも否定侮蔑することなく丁寧に紹介していく仕事に、素晴らしいものを感じた。
愛国者の入門書として、とても良い一冊。