#208『自分をえらんで生まれてきたよ』いんやく りお

 途轍もない本に出会った。著者は刊行時9歳くらいの子供で、難病を持って生まれた。その子供が語る言葉を親が書き留め、それが人の目に留まり、こうして本になった。
 現在、生前の記憶(その中には、宇宙の仕組み、命の価値、神の存在に関する情報が多く含まれる)をかなり明確に携えて生まれてくる子供たちは増えている。場合によっては、著者の、りお君のように病気や障害を通して語りかけることもある。基本的に、人はその苦しみを通して、メッセージを伝えることが出来る。
 この子供の魂の知性は驚くほど高く、大きく、澄んでいる。魂の声だからと言って、私は丸呑みはしない。疑う訳ではないのだけれど、ごく普通のこととして「しっくり来るか来ないか」という個人差はあると思う。それと、色々読んできたし、学んできた、また自分自身もメッセージを持って生まれてきた人間なので、「そう!」と即座に反応するのもあれば「んん?」と思うのもある。
 この本は、読み出した時から涙が浮かんだ。

「生まれる前、ぼくは宇宙にいた。流れ星に乗っていた」

 なぜだか分からない。何に反応したのか分からない。しかしこの一文だけで私の中の深いところで何かが動揺した。自分もそうだったのにそれを忘れていたんじゃないかと感じた。とても頼りない感覚ながら、そう思った。
 いくつもの言葉が問答無用に語られる。

「自分を大切にすると、地球へのおみやげになるんだよ」

「神様には悩みがある。神様は人間の相談に答えているのに分かってもらえない。心の耳が閉じているから、答えても聞いてもらえない。どうやったら聞いてもらえるのか、神様は困っている」

「心は神様のかけらで、体は地球のかけらだよ」

 時々、何を言っているのか分からない言葉もある。いつか分かると思う。こういう言葉は地上の言葉とは訳が違う。詩の更に向こうにある言葉だ。それは人が理解できるまで待っている。理解できない時に人を理解させようとはしない。今は分からない言葉が本書後半には多いが、いつか読み直した時、ふっと分かると思う。

 最後の方に出てくるこの言葉を読んだ時には、こういう時によくあるように、はっと息を飲んだ。それから心が苦しくなって涙が溢れた。

「心とは何か? 心とは喜びだよ」

 本書を読むと、私たち人間がその潜在的価値においていかに尊い存在かということが伝わってくる。生きていること、わけてもこの星に、人として生きていることの有り難さを感じることが出来る。
 今の世の中は外形的には(物心ともに)かなり崩壊に向かって加速している。世の中がこの先明るいとはまず思えない。しかし一方でこういう子供たちが、というか魂たちが生まれてきて、「本当の教え」を伝え始めている。
 人間はこの膨大な年月にわたって、数知れない教えを語り、伝えてきた。しかしその多くは本質的ではなく、また本質的なものも歪曲され、逆に人間精神を束縛している。人類には新しい、より透明度の高い教えが必要だが、それは恐らく子供たちが伝えている。ようやく人間は神に近付くことを始めつつある、と私は感じている。

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