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水深800メートルのシューベルト|第1180話
一旦喧嘩が収まっても、数時間後には怒鳴り声が始まる。完璧に規則違反だが、彼はお構いなしだった。一人で怒鳴り、僕らの酸素を無駄遣いしていた。きっと自分の死を悲観して自暴自棄になっているんだ。そうとしか、思えなかった。もしかして、相手が挑発に乗ったら、それを口実にそいつを殺して……、いや、いくらなんでも、合衆国海軍の軍人がそんな……。いや、人が一人亡くなれば、その分酸素の分け前が増える。彼の緑の目はカッと見開いていて、結膜には血管がひび割れのように走っていた。
それとも、乱闘を起こして自分が死ぬのを望んでいるのか? いや、やはり自分さえ助かればいいという考えか? ロバートは、気が滅入って絶望そのものといったセペタのベッドの前に立っていた。