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サザエさんにみる世相の変化
2025年2月24日月曜
昨夜やけに冷えるなと思って寝床についたが、朝起きて外を見やるとまさかの雪景色。
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比較的暖かな瀬戸内で、しかも3月の声が届きそうな頃合いでの不意打ち。
実害は全くないのだが朝から「うわ!」と声が出た。
三連休最終日だから、あれこれ予定している人も多かろうが、皆様事故などお気をつけください。
本来であれば「梅花の候」で、春爛漫とまではいかないまでも「暖かくなってきた」と体感し始める頃なのだが、今年はまだ春の到来を感じられた瞬間は無い。
光熱費は上がる一方だし、エアコン使う日が多いのでSNSでも「今月の光熱費がやばい」とのポストを今もよく見かける。
電気代はいつ下がるのか。物価はいつ下がるのかと怨嗟の声も聞こえない日がないほどなのだが、はっきり明言しておくと「その日は来ない」である。
上がった物価が下がったという歴史的例はまずない。
価格を決める側は下げる事を極端に避けるものだし、むしろ慣れるのをひたすら待つというのが常識だ。
サザエさん概要
サザエさんを知らない人は日本にはいないだろう。
ドラえもん、サザエさん、ドラゴンボール、アンパンマン。
日本のアニメ四天王の中でも最古参で、もっとも継続されているのがサザエさんだ。
ちなみに初代サザエさんと初代ドラえもんの声を務められたのは大山のぶ代さん。すごい人だ。
原作は1946年4月、福岡の地方新聞の四コマ漫画から始まっており、まさに終戦以降の日本を映し出す鏡である。
磯野家
サザエさんは当初独身で登場したのだが、磯野家が東京に引っ越すタイミングでマスオさんと結婚しフグ田姓になる。
この時サザエさんは24歳、マスオさんは28歳であるのだが当初は磯野家に同居していなかったようだ。
磯野家の近くに賃貸アパートを借りて暮らしていたのだが、マスオさんが突然賃貸の敷地の塀をノコギリでぶった斬るという凶行に及んだ末に大家に追い出されてしまい同居に至ったという顛末がある。
恐らく磯野家でもっとも怒らせてはいけない人間だろう。
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この頃のまま登場人物達は50年以上歳をとらない。
波平は54歳で妻フネは52歳である。
美嫁をもつノリスケは、波平の妹の三男であり実は新聞記者だ。
平均的な日本の家庭を描いてあるのかも知れないが、波平もマスオも東証一部上場の一流商社マンであり、波平に至っては地方から東京本社に異動しているため相当なやり手であることが窺い知れる。
現実社会で言うと三菱商事、三井物産に二人は勤めていると言うところだろう。
波平からみる世相
波平が54歳の設定であるのは実は意味がある。
アニメ放映開始1969年当初、勤め人は55歳定年が一般的だったからだ。
つまり波平は「定年間際の疲れた大黒柱」なのである。
この頃、退職金は余生を謳歌する程度にはあったらしく、体力のある年齢で自由を手に入れられた良い時代である。
1969年と言えば高度経済成長真っ只中であり、商社の退職金も相応のものだったのだろう。
土地家屋もあり、同居する息子は同じく商社の係長。
刺激さえしなければサザエが実効支配する平和な家庭を継続できるだろう。
悠々自適な引退ライフが送れるはずだ。
専業の主婦が二人。潤沢な退職金と貯金。健康で従属的な婿に、元気な子供が3人と猫。
それが磯野家だ。
2025年
日本の良い時代の、恐らく上位の数パーセントである磯野家の日常を今の我々は「日曜の夜」という最もナーバスな時間帯に観ているわけだ。
定年は1969年当時の55歳からどんどんと延びていき、今や65歳。雇用延長で70歳というのが大手企業のマス層では無いだろうか。
35年の変動金利住宅ローンを抱え、定年を迎えてようやく支払いが終わる。
国民税負担率は24.3%から44.6%に上がってしまい、その大半は官僚の無駄遣いと社会保障費の甚大なる高騰だ。
これを書くのは躊躇われるが、リアル社会では波平世代は100歳を超えておりほとんど存命していない。
当時28だったマスオ世代が84〜85歳であり、社会保障費の大半はこの世代に遣われている。
戦後の日本を汗水垂らして復興させたのは波平世代であり、マスオ世代は高度経済成長の恩恵を受け続け、社会保障費はごく僅かしか支払っていない。
社保を投資とみる場合、圧倒的な勝ち組世代である。
その世代を背負うのはタラオやイクラ世代の50代であり、恐らく彼らは今も住宅ローンの支払い真っ只中であろう。
子供は二人いて、毎日のように報じられる増税や社会保障費の増加に辟易しながら波平と同い年を迎えた自分の身を憂いながら通勤電車に揺られる…
そんな「磯野家のいま」を漫画にしてくれないかなと少しだけ期待している。