睡眠具-looking(4)
近頃はひとりで、駅から電車の中、そして最寄り駅から家路までをぼうと夢想しながら帰ることに耽っていた。彼女のことを考えるのに、これ程までに甘美な時間を私は知らなかったのである。
彼女もまた、ひとりで帰ることの多い孤高の人だった。黒い紗幕一枚でそこらの有象無象と隔てられているような仄暗さが、私の心を捉えて離さなかった。最も、彼女がいったい何を考えながら帰路を過ごしているのかということについては知る由もなかった。
しかし今日は偶々玄関で彼女を見かけたので、勇気を出して彼女を帰りに誘