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ドキュメントMVに恋して

サカナクションが大分前から好きです。アルクアラウンドのMVを観たのが最初で、第一印象は遊びを全力でやっているバンドだなという感じでした。その時はMVの巧妙さに感動したのですが、聴き続けながらサカナクションというバンドが音楽を愛するプロフェッショナル集団で、各々が計算し尽くした中でも純粋に音楽を奏でることを楽しんでいる人達の集合体であると実感していきました。メンバーを指揮し、バンドの方向性を決定する山口一郎さんは曲自体だけでなく曲をどう魅せるかに関しても非常に拘りが深い人で、それが表れるものの一つがMVだと思っています。

サカナクションのMVはかなり独特で、その大半が何を伝えたいのかよく分からなかったりします。『ルーキー』では、ベッドの上で起きるシーンから幾度も同じシーンがループしていき、終いには女装姿の山口さんが地面に倒れ伏している。『スローモーション』では、きったないスーモ(?)や、ヒルのような着ぐるみを着た人達が女性と通販番組のように会話を交わしたり踊ったりする、といった頭を混乱させるものばかりです。それが面白いのですがね。私は、どんな作品においても作品について思考する前には「分からなさ」が前提としてないと人間は考えようと思わないので「分からない」作品は良いし、それは一つの魅力だと思っています。

そのような数多くのMVの中で、私が数年に渡り追い続けているものがあります。それは、『ドキュメント』のMVです。最初にこの曲はアルバムで聴きました。コード進行やスローなテンポ、ベースラインも相まって不気味で不安にさせる曲だなーという印象でした。しかしそれは序の口で、MVを観て本当の恐怖を知るのです。「あい」という名前の女性が山口一郎の自宅にストーカーとして侵入し、マグカップを猫のように舐め回したり、洗面台で髪の毛をライターで燃やしたり、iPadのカメラロールに映る数々の写真を盗み見て大爆笑したりと、次々に恐ろしい行動を繰り返していくのでした。しかし『ドキュメント』のライブ映像を観て曲の良さに気づいたり、怖さが癖になったりして何度もMVを再生している内に、干場かなえさん演じる「あい」さんに心奪われていくのでした。干場かなえさんは、普段ラジオなどでお話されるときは朗らかで声も愛らしく、とてもお茶目な印象で、ブログでは穏やかな日常を投稿されたり、Twitterでは愛犬と戯れたりしています。それなのに、「あい」という人物は、暗い目を持ち、執着的で病的な愛を拗らせており、基本的にずっと無表情なのに愛する人の写真を見て感情が溢れ出てしまう。そんな彼女が愛おしくて堪らなくなり時々MVのファンアートを描いたりなんだりしていました。

そして、MVについて調べるうちに気になる情報が。『ドキュメント』のMVには、別エンディングがあるというのです。色々なブログサイトでドキュメントMVに関する記述をちらほら見て、通常では最後に「あい」さんが鴨の置物を持って一郎さんの背後を通り過ぎるというエンドなのですが、別エンディングでは「一郎くん」と話しかけ……というところまでしか突き止められませんでした。別エンディングは、サカナクションのMV集『SAKANARCHIVE2007-2011』に収録されているそうです。古い作品のため入手は簡単ではなさそうですが、何年も追いかけ続けたドキュメントMVの別エンディングを見るまで死ぬことはできません。自分の目で確かめることが出来る日が待ち遠しいです。

一方、ドキュメントMVを通して干場かなえさんのファンになってしまった訳ですが、Twitterの更新は2015年、ブログの更新は2020年を最後に止まってしまっています。夫である髭白健さんのTwitterも、大物アーティスト達から引っ張りだこで、ライブに関するツイートが多く見受けられて家族の様子を知ることはあまり出来ません。かなえさんが、お元気で、母として幸せであることを願っています。


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