女子会が行われるのはいつだって墓場だ

まるでセックスアンドザシティ

キャリーと大親友たちのように、
私たちはいつだって恋も仕事も全力である。

私、みぃ、のぞみ、さやちゃん

高校の部活の同期で、かつて人生の1番若くてキラキラしていた瞬間を一緒に駆け抜けた仲間だ。今は4人とも全く別の仕事に就く中で、定期的に時間を合わせてはドライブをしたり、ファミレスで４時間ぶっ通しで話したり、ちょっとお洒落なお店でコース料理を食べたりしている。大学の卒業旅行から恒例になった、年に一回星野リゾートに泊まる旅はコロナ禍になっても欠かさなかった。


4人で遊ぶようになったのはちょうどハタチくらいの頃。
当時同じサークルの好きな人にLINEを送るタイミングをあーだこーだ言い合ったりしていたのが懐かしい。

『6年経ったってさ、うちら言ってることまじで変わらないよね』

みぃが言うと、4人でどっと笑った。

生ぬるい風が春のようで嬉しくなった先週末、一ヶ月ほど前だったみぃの誕生日を祝おうと、スペイン料理屋さんでちょっと豪華なランチコースを食べながら、いつも通り近況報告会が始まる。

『最近デートする人いる？』『アプリで会った人いたじゃん？あれどうなったんだっけ』『この前話した年上いたじゃん？あれさ〜』

こうやって互いのたわいもない恋愛ネタを共有するのはルーティンなのだけど、最近は私たちの中で少し『珍しい状態』なのだ。

アラサーにして、4人全員フリー。

これは本当に自慢なのだけど、私はともかくこの3人はほんとにいい女たちなので今まではそんな状況あり得なかった。むしろ彼氏がいない人が少数派になりやすくて、なんなら4人で会い始めたハタチのときは全員彼氏が居たのに。

この6年、4人とも色んな出会いと別れを繰り返して、今はまるで待ち合わせをしていたかのようだ。

そんな私たちが各々あまり変わり映えしない近況報告を終えると、自然と『こんな人と出会いたい』『出会いを求めるならどこか』『次どんな人と付き合いたいか』という今後についての話題に移行した。

そこで生きてくるのが私たち4人の過去の経験だ。いい女が4人も集まれば（ちゃっかり自分も数にいれさせてもらおう）、自分の経験以上の反省を生かしてきっといい男と出会えるはずだと、みんな自分の引き出しをひっくり返すような勢いで、女子会の話題に何度も登場していた『ありえない過去の男の話』を頭に浮かんでは話すのだ。

会話に登場するダメンズ達は過去に女友達が愛した男であることは間違いないのだが…
今はまるで親の仇をとるかのような熱量で罵倒する。大好きな女友達が敵と見做したら私たちにとっても敵でしかない。

それでもあくまで『本人が敵と見做したら』というのが私たちの大事なポイント。

この3人の幸せを心から願っているけれど、それは本人の意思を尊重するというのが大前提にあることだ。例えば周りから評判の悪いダメンズと付き合っていたとしても、私は本人が覚悟を決めてそれで良いというなら応援したい。別れようか悩んでいるときも、本人の気持ちを1番大事に、その気持ちが彼に伝わる方法を一緒に考えたい。
決して自分の物差しで友達の恋人や好きな人の評価はしないし、幸せを測らない。それは私もしないし、3人もしてこない。その価値観が似ているから、何年もこうして恋愛の話ができる。それは3人のことを心から信頼をしているからできることでもある気がする。

でも『本人が敵と見做したら』私たちの出番だ。
徹底的に応戦する。もし友達を傷つけようもんなら私たちが許さない。友達が息の根を止めたって私たちは何度だってメッタ刺しにするのだ。（怖い）

『なんか私たち、同じこと繰り返してない？』

私たちにとって、今回新たな境遇に加えて新たな発見があった。

『好きな人できたって言われたらわーきゃー騒いで応援してさ、彼氏になったらのろけを聞いて褒めちぎって、別れたら徹底的に罵倒して、、っていうのを4人分しかも6年集まる度に繰り返してるよね』

気がついたら途中から4人声が揃っていた。
女子会なんてそんなもんと言われたらそんなもんかもしれないけど…

『でも今なんてさ、誰も好きな人もいないから誰かの過去の男を徹底的に叩くことしかやることがないね』
たしかに。

『もうボロ雑巾になるまで叩いたのに。それでもまたしばらくするとミイラを掘り起こしてまたボコボコにしてるね』

私たちはいつだって墓場で女子会をしているようなもんだと言って笑った。

昔の男の亡霊なんかちっとも怖くないけれど。

いつか、墓場には似合わない純白のドレスを着て集まる未来もあるのだろうか。
そのときは15センチのブライダルヒールで今度こそミイラが蘇ることがないように葬ってやろう。

でも今はまだ、折角4人の人生がうまく交わり待ち合わせが出来ているのだから。
変わらない会話を楽しみつつ、たまには墓にお供物でもして新たな出会いを4人で楽しみにしていたい。