「もくれんの木」
祖母の家には大きなもくれんの木がある。
小さい頃から私を見守ってくれ、季節の移ろいを感じた。
― 春は新学期
制服姿で写真を撮り、もくれんと共に成長してきた
― 夏は蝉の鳴き声
台風で暴風の時には葉があちこちに飛んだ
― 秋は冬支度
落ち葉掃除を手伝い、休憩に祖母と縁側に腰掛けた
― 冬は雪化粧
犬が駆け回り、幼少期はそりで遊んだ
数年前、祖母は帰らぬ人となった。
さらにそのあと、管理するのが大変だからともくれんの木は根元から伐採された。
庭で洗濯物を干したり、野良猫に話しかけたり、落ち葉を掃く祖母は、もういない。
あんなにたくさん居た蝉も、もういない。
大きく生い茂った葉を広げて育っていたもくれんの木も、もういない。
今日、切り株を見た。
背は私よりもはるかに低く、周りには草が生え、小さなアリやクモが元気に活動していた。
時代は受け継がれる。
今度は私がこの木を見守る番だ。