小さな小さな物語 「ごきげん虫のマックス」
ある森の中、葉っぱの影でひっそりと昼寝してる虫がいました。
名前はマックス。
ぱっと見は小さないも虫だけれど、マックスには心の中に広がる大きな夢がありました。
マックスの夢は森で一番綺麗な花になって、森の中にたくさんの花を咲かせること。
マックスは、葉っぱの上でごきげん虫になるのが得意です。
いつも「やったー!」「楽しい!」と、小さな体をゆすって喜びます。
太陽の光を浴びては「ぽかぽかできもちいい!」とご機嫌になり、雨のしずくが落ちてくれば「キラキラしてる!」と、何にでも大喜びです。
まわりの生き物たちもつられて、みんなごきげん虫になっていくのです。
マックスには毎日不思議なことが起きました。
「やったー!」と声を上げると、その小さな体が少しずつふわふわになったり、ふくらんだりしました。
森の仲間たちがマックスを心配しました。
みんなには何が起きているのかわからないからです。
でもマックスは不安より大切なことを知っていたのです。
それは、やったー!という魔法の言葉。
そして、ある日。
マックスの体がふんわりと光に包まれ、さなぎへと姿を変えました。
たくさんの「やったー!」が魔法になった瞬間でした。
「もしかして…?」と、小さな仲間の虫たちが見守る中、しばらくすると、さなぎがふんわりと割れて、美しい蝶が羽根を広げました。
鮮やかな羽根をもつマックスは、新しい姿で空高く舞い上がりながら、「やったー!やったー!」と声を上げました。
小さな虫たちもマックスを見上げ、体の中に大きな希望を抱きます。
「いつか…!」
蝶になった今もごきげん虫のマックスは、森の中をどこまでも高く舞いながら、小さな仲間たちを見守り続けています。
「みんなにも、やったー!がたくさん届きますように」と。
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