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花穴【穴の中の君に贈る】(毎週ショートショートnote)

秘密の花園という本を小学生の頃に読んだわたしはいつかきっと自分の庭を作るんだと心に決めていた。
田舎で、いくらでも土地が安く買えて、好きなように土作りからできる場所が見つかった時には小躍りした。
わたしに友達はいない。
花を育てられたらそれでいい。


花を育てるために集めてきたものをプラスチックの衣装ケースにいくつも詰めてある。
わたしは荒れ果てた土を鍬で掘り起こし、ガラを丁寧に取り除き、深い穴を掘った。
そこに持ってきたプラスチックの蓋を開け、よいしょと逆さにする。
どどんと土に塊が落ちる。
わたしは掘り返した土をスコップで穴に埋め戻す。


さて何を植えようか。
アナベルという白くぽってりとした咲く西洋紫陽花にしよう。
そのわきにはアジュガ、ラティスにトケイソウの蔓を絡ませたらいいかもしれない。


ふと埋めたばかりの土に何かが光った。
ああ、爪が陽の光に反射したのだ。
ちゃんと埋めておかないと。
花たちの養分になる穴なんだから。

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