そのバスに乗っけてくれないか【フシギドライバー】(毎週ショートショートnote)
恐ろしいくらいの太陽の熱がアスファルトを焦がして頭はどうかしそうに沸騰している。
オレはさっき会社を辞めてきたばかりだ。
お前の存在する意義はないといわれた。
そうですか。
そのまま会社をあとにした。
オレの足は今どこに向かっているのか。
こんなところにバス停があったろうか。
どこ行きとも書いていない真っ白の看板。
バスと黒文字で塗られているだけ。
気がつくとどこからともなくバスが現れ、目の前で停まった。
オレは開いたドアから乗り込んだ。
客はオレだけだ。
運転手の顔は見えない。
このバスはどこに行くのか。
そう尋ねてみた。
お客様を待っている場所へです。
バスは動き出した。
ぐんぐん走り、バスはやがて狭い田舎道をひたすら進む。
ここは。
オレの生まれ育った町。
両親が眠る町。
運転手は小さな寺にオレを降ろした。
そうか。
苔むした墓に手を合わせる。
ふた親が呼んだのか。
何度でもやり直せる。
生きてるだけでいいんだよ。
バスはもういない。