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一目惚れ【はじめての鬼】(毎週ショートショートnote)
彼女はいつも眼帯をしていた。
ものもらいかなんか?と聞いても返事はなかった。
みんなあいつには関わるなと忠告した。
でも落ちたんだからしかたない。
彼女の中に。
俺は名を呼ばれるだけで子犬のように喜んでしまう。
図書館でいつも本を読んでいる彼女。
隣に座り、読まない歌集なんてぺらぺらめくってるけど文字なんて頭に入らない。
ねえ。
わたしのこと好き?
そんなふうにそんな目で言われたら、うんとしか言えない。
なんで俺は彼女にこんなふうに言いなりになってしまうんだろう。
片目だけの目がじっと俺を見つめる。
その目どうしたの?
これ?
ふふっと笑う彼女の白い手が俺の手を掴むと
眼帯の上に持っていく。
優しいのね。
みんなわたしの眼帯を怖がっているのに。
しかたないわよね。
彼女がそっと眼帯をずらす。
真っ赤な鬼の目がこちらを睨んでいる。
何事もなかったように眼帯を付け直す。
初めて見た鬼は一目惚れした彼女。
まあ、いいか。
鬼も彼女から離れられまい。
俺もそうだ。