ふたり #シロクマ文芸部 ★出だしの海砂糖がはいっていなかった件…お詫び🙇♀️
海って失恋した時に来たくなる。
とどーんと打ち寄せる波に悲しみをのせて、ザザーンと引いていく波に全部持っていってもらうの。
海の水がしょっぱいのは涙がいっぱい沁みているからだね。
そっか。
トワは形の良い眉を少し寄せて丸めた膝を胸に抱える。砂は温かく、波打ち際に座っているふたりのベンチだ。
海って人を癒す為にある大きな水たまりなんだね。
それを聞いてぼくはクスッと笑った。
トワならそこに長靴を履いて飛び込んでいきそうだからだ。
ねえ、トワ。
なあに。
さっき海がしょっぱいって言ったけど、甘くなる時もあるんだよ。
そんなことってあるの?
トワの大きな瞳がこちらを覗き込む。
ぼくはトワの唇に唇を重ねた。
ねえこれって。
夕焼けに照らされたトワの顔はほんのり桜色に染まっている。
こんな甘い砂糖みたいなキス、初めて。
ふふ、トワは笑ったけれどこちらを見ない。
ぼくもトワが見つめる海を忘れないように、日が水平線の向こうに沈むまで見ていようと決めた。
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